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あんなことがあって、さらに来るなと言われ、それでもあのお店に通えるほど、私の神経は図太くなかった。会いたいなと思う毎日。我慢できなくて泣きながら寝落ちするようなことも多かった。
食欲もあまりなくて、それでも友達に心配されるから最低限だけ食べていた。
「アヤ、大丈夫？」
「最近ほんと元気ないよね」
「なんかあった？」
まさかネオン街で攫われて危うく死にかけたなどと言える訳もなく、大丈夫と何とか笑顔を向けるだけで精一杯だった。そしてあれから約1ヶ月。お金をめっきり使わなくなったから少しだけ貯金も増えて、それに安心できるのにテヒョンくんに会えない苦しみはいつまでたっても消えてくれない。
「お先に失礼します」
「はーい。気をつけて帰ってね」
バイトを終えて帰り道を歩いていたある夜。
駅に向かう途中だった。暗い路地裏の、ひとけのないその場所に誰かが座り込んでいるのが視界に入ってきた。この辺りは酔っ払いが泥酔して寝ていることも珍しくはないので見ないように足早に通り過ぎようとした。けれど。
「え……」
街頭に照らされたその横顔には酷く見覚えがあった。
見覚えがあったどころの話では無い。
私が今、会いたくてたまらない人。
遂に幻覚でも見ているのかと思ったけれど、よく目を凝らしてみればそれはやっぱり彼だったから。
「テヒョンくん……？」
恐る恐る近付いて声をかけたとき、ゆっくりと顔を上げたその人は、月明かりに照らされて、まるで天使かなにかではないかと疑いたくなるほど美しい顔をしていた。
彼は虚ろな瞳で私を捕らえると自嘲し、掠れた声で言った。
「……あぁ、きみね」
「テヒョンくん、」
彼の雰囲気は私が一度だって見たことがないものだった。
シワひとつないピカピカのスーツも、綺麗にセットされた髪も、上品に飾られたピアスや指輪、ネックレスも、美しい女の人も、高級なシャンパンも。今のテヒョンくんにはその全てがなくて。
いつもの高級な宝石のような彼はそこにはいない。まるで、捨てられた子犬のような、そんなテヒョンくん。
思わず駆け寄って地面に座り込んでいる彼と目線を合わせるために屈む。
ボロボロのパーカー、ボサボサの髪、スニーカーは泥だらけだ。
私の知らないテヒョンくん。だけど不思議とそれを不審には思わなかった。こんな姿もまた、彼自身なのだと冷静に受け止められた。
「テヒョンくん、あの、」
「もーさあ、おれ、
死にたいなあ」
ヘラりと笑う彼の心は泣いていた。
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あやテテ(プロフ) - 玲さん» こちらこそ引き続き読んで下さり嬉しいです！テテペンとしましては最上級の誉め言葉です、、恐縮です…。嬉しいお言葉ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします！ (3月23日 19時) (
レス) id: df40273254 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - また更新してくれて嬉しいです。あやテテさんの描くテヒョン、本当に素敵だなぁと思います。いつも楽しみにしてます。 (3月22日 21時) (レス) id: 268f4047d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あやテテ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ayatae00/
作成日時：2024年3月17日 16時
