62 TH ページ12
.
アヤ「テヒョンくん、」
地面で座り込む俺を見た彼女は駆け寄って来るとしゃがんで俺と目を合わせた。心配そうなその瞳は、俺が見たことないほど純粋で……不覚にも、綺麗だと思ってしまった。やっぱり今の俺はどうかしている。
アヤ「テヒョンくん、あの、」
どう声を掛ければいいかわからない。それでもほっとけない。
そんな顔をしながらその女が俺に何かを紡ごうとした。
気付けば、本当に馬鹿なことを口走っていた。
「もーさあ、おれ、
死にたいなあ」
本当の俺のことを知らず、”オウジサマ”の俺に恋焦がれていただろうその女に漏らした自分の心の声が、やけに薄っぺらくて笑ってしまう。目の前の女は俺を恐れてさっさと立ち去るだろうと思ったのに。彼女は悲しそうな顔をして俺の名前を呼んだ。
アヤ「…テヒョンくん」
「ねー、慰めてよ」
アヤ「…っ、」
どうせ、あんたも。みんなと同じだ。
「あんたさぁ、俺の事好きでしょ？馬鹿みたいにだーいすきでしょ」
アヤ「……うん」
ほらね。
「じゃあ慰めてよ、何してもいいよ〜」
アヤ「テヒョンくん、」
「抱いてって言うなら抱いてあげる
好きって言葉が欲しいならいくらでもあげる」
アヤ「テヒョンくんっ、」
俺の周りにいる女なんてみんなそうだ。
ちょっと甘い言葉をかければ馬鹿みたいに縋りついてくる。
「俺があげられるもので、あんたの欲しいものはぜーんぶあげるからさ
ねえ、慰めてよ」
俺は今、多分どうかしてる。
それできっと、この女も少なからず俺に好意を持ってる。
だったら。互いに望むものを差し出せばいいじゃないか。
そう、思ったのに。
アヤ「テヒョンくんっ！！」
目の前のその女は苦しそうに俺の名前を呼んだ。
なんで、どうしてあんたがそんな顔をする？
アヤ「っ、てひょん、くんっ……」
「…………なんでアンタが泣いてんの」
アヤ「だってぇ、っ……てひょんくんがっ…………泣けないからっ……」
「………ほんと、馬鹿な女」
俺に金を落とす馬鹿な女ならもう数えきれないほど見て来た。
でも、ここまでの大馬鹿女に会ったのは初めてだ。
俺のために泣くなんて、どうかしてる。
呆れて、でも、なんだか目が離せなくて。視線が絡むと考えるより先に体が動いた。
涙が伝う彼女の頬を撫でて唇を重ねる。
「俺、馬鹿な女は嫌いだよ」
アヤ「…うん」
こんなに意味のないキスは、初めてだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 302人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやテテ(プロフ) - 玲さん» こちらこそ引き続き読んで下さり嬉しいです！テテペンとしましては最上級の誉め言葉です、、恐縮です…。嬉しいお言葉ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします！ (3月23日 19時) (
レス) id: df40273254 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - また更新してくれて嬉しいです。あやテテさんの描くテヒョン、本当に素敵だなぁと思います。いつも楽しみにしてます。 (3月22日 21時) (レス) id: 268f4047d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやテテ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ayatae00/
作成日時：2024年3月17日 16時
