【名探偵コナン】珈琲と砂糖とミルク【服部平次】 (ページ36)

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砂糖にじゅうはちこめ。ページ36

ぽかん、としていた。

今日の朝から、本当に夢なんじゃないかと思えることばかり。

誘拐されかけたり助けに来てくれたり待っててと言われたり。

まだまだ現実味がなくて、夢見心地だった。

ただ、待っててくれないか、それだけで、自惚れてしまいそうだった。

自惚れるとか、ほんま、笑い話にもならんけど。

少しだけの期待は、止められなかった。

パトカーに揺られて、家まで送って貰えた。

ありがとうございます、と頭を下げて家の中に入っていく。

薄暗い部屋の電気をつけて、ふらふらと千鳥足でソファに座る。

「お前が大切なんや、って ... 」

言われた言葉を復唱する。

だけど、和葉の事は？

眉を寄せ、考える。しかし、もう、気持ちは揺らぐなんてなかった。

ちゃんと、クラスメイトに、伝えらな。

何度も何度も励ましてくれた、クラスメイトに、ありがとうって。

ぐっ。と唇を噛み、携帯を取り出す。

だけど、開きかけた電話を閉じた。

こうやって、何か越しに伝えるんじゃなくて、直接話したかった。

話したいことがあるから、会えないかとメールを送る。

集合場所と、時間を添えて。

バクバクと鼓動の音が煩い。

...
数分後、返信。

夜道は危ないから、こちらに来る、ということが書かれてあった。

わざわざ、そこまで気を使わせて、と眉を寄せるも、その言葉に甘えることにした。

家のドアを開けて、玄関先で待つ。

ゆっくりと、日が沈んでいく。

夜の空が、広がっていく。

目を細めながら、それに目を奪われて見詰めていた。

綺麗やなぁ、と呟く。

ただ、そうでもしてしないと、どうにかなりそうな程、心に余裕なんか無かった。

暫くして、駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。ふっ、と顔を上げて、そちらを見つめれば、彼が居て。

「悪い、待たせて ... ほんで、話って、服部の事やろ？」

こちらをじっ、とみつめて言葉を放った彼に目を見開く。なんで、わかったの、なんて首を傾げる。

「ほんま、お前ら、似たもの同士や ... 」

ぽつり、と呟いたのに首を傾げながらも、目線を落とす。

「私、やっぱり、平次が好きや ... 諦めようとしたけど、無理やった。自分勝手なのは分かっとる。やけど、こんなままで付き合ってても悪いなっ、て ... 」

やから、と言いかけた。

その顔は、少しだけ寂しそうな笑が浮かんでいた。

「わーっとる、言いたい事は。言うたやろ？」

好きな人の幸せが一番やって。