砂糖じゅういっこめ。 ページ13
「 (名前)が、好きや。付き合って欲しい。」
真っ直ぐこちらを見詰める目に、嘘、なんて全く感じられなくて、反応に困ってしまった。
嘘じゃないなら、本当なら。返事をしなきゃならない。
私は、平次が好きや。
だから ...
でも、このまま引き摺っていくのか？
気持ちが、揺らいだ。
新しい、恋で、諦めもつくかもしれない。
それなら ... 返事は、決まっている。
「 ありがとう。...宜しくお願いします 」
なんて言いながら、微笑む。
相手の緊張したような表情が解れて、花が咲くような笑に変わった。
「 ほんまか！？...めっちゃ緊張しててんで？」
嬉しそうな笑顔に釣られて笑う。
言ってくれて、ありがとう、なんて笑って見せながら、歩き出す。
夏祭りの余韻と、告白された余韻に浸りながら、からん、と下駄を鳴らして歩く。
静かに照らす月光。何だか、急に気恥ずかしくなってきた。
「 後、迷子なんか嘘や。」
そう呟くもんだから、くす、と吹き出す。
「 そこまでして回りたかったん？」
なんて、少しだけの意地悪のつもりで聞いてみた。
「 ンな事、言わせんなよ...悪いん？」
にっ、と笑っているからつい目を逸らす。
...結局、家まで送ってもらった。
ありがとー、と礼を告げて手を振り、家に入る。
でも、まさか告白されるなんか思ってへんかったわ...
未だに信じられない気持ちで一杯だった。
告白の事
...キス、の事も。
それでもうじうじ悩んでもしゃーない、と言い聞かせる。
折角、告白、してくれて彼氏もできたんやから、楽しまな損...やんな。
帯を解いて、浴衣を脱いで浴室に。
ちゃぷ、と体を沈める。湯気がゆっくりとのぼっていく。
はぁ。と息を吐きながら、天井を見つめた。
でも、キスの事はタイミング悪かったわ...
吃驚したし。
あの時の心臓の煩ささが戻って来れば、ぶんぶんと首を振って取り払う。悩むことはない。大丈夫や。
大丈夫...
絶対、大丈夫やから。もう、諦められるはずやから。
苦しい思いも、全部、蓋をして仕舞っておけばいい。
無かったことにして、忘れる。
それが、一番いいやんな...
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作者名：あやせ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/home
作成日時：2017年8月5日 1時
