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8 柳葉とひと仕事 ページ8

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俺には毎年試合が始まる前にひと仕事がある。ホームランダービーのエキシビションである。


2020年シーズン後半から2021年シーズン前半にかけてホームランを打ちまくった俺はホームランダービーに選出されることになった。

その時の投票数が奇跡的に哲人さんと一緒になり、通常四人選出のところ、五人が選出される結果に。

パ・リーグと人数が合わないということで色々話し合った結果、俺は本戦には参加せず、盛り上げ役でエキシビションホームランダービーをすることになった。


当時、勢いづいていた俺は「最低でも五本入れます」とスカした発言をした。実際始まるとフライが精一杯という結果に終わり、様々な方からイジりと慰めを頂いた。



その流れが何故か評判を呼び、2022年は選出されなかったのにエキシビションとして出場することになった。当然ながら0ホームラン。会場が盛り上がったおかげで今年もエキシビションに抜擢された。


ちなみに今シーズンの俺のホームラン数は未だ0本。明らかにホームランダービーに出る数字ではないのだが、評判は良いらしい。更には俺のホームランが出るか否かで賭けている人もいるらしい。

……まあ、楽しみ方は人それぞれだしね。



今年のピッチャーは大城卓三さんにお願いした。ピッチャーの人にしてもらう訳にはいかないので、一番ピッチャーに近いキャッチャーにお願いしている。

ベンチから少し出たところで卓三さんと待機しつつ、名前を呼ばれてグラウンドの中央へ向かう。


開始前にアナウンサーの方に意気込みを聞かれる。この打てないホームランダービーへの意気込みはかなり難しいのだが、和真さんから「開き直ることも大事やから」とアドバイス頂いたので、開き直ってみる。



「このバンテリンの天井に風穴開けてやりますよ!!」



うぉぉ、と盛り上がる会場。隣で苦笑いする卓三さんは意気込みを聞かれたときに半笑いで「打てたらいっすね」とコメントしていた。絶対打てないと思ってるやつだ。

この俺をナメまくってる卓三さんをぎゃふんと言わせたい……なんて思っていたこともあったっけなぁ…。



結局今年も0ホームラン。沸き立つ会場。卓三さんに慰めがてら頭を撫でられながらベンチに戻った。


ベンチでは爆笑する田口さんとテルさんに迎え入れられ、牧さん、和真さん、拓夢さんに「よっ、ゼロホームラン」と囃し立てられ、バウアーには「(僕から打ったホームランは何だったんだ)」と悲しい顔で話しかけられた。


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作者名:カブ | 作成日時:2023年12月17日 0時

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