球界の弟【3】 (ページ6)

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｢(ホームランぶりですね)｣

……ミスった。言葉選びを完全に間違えた。傍から聞いたら嫌味にしか聞こえない。

バウアーなんかフリーズしてるんだけど怒ってるやつだ。あの聖人怒らせたら流石に世間も黙ってないって。炎上どころの騒ぎじゃない。大炎上、俺の家が燃えるレベルの大炎上だ。

状況を飲み込めてない先生に通訳の飯沢さんが意味を伝えると、先生は吹き出して笑った。笑ってる場合じゃないんです。

どうにかして取り返さないと炎上どころの話ではなくなる。意を決してバウアーに許してもらう作戦を決行することにした。

｢(ジョーク、ジャパニーズジョーク！！忘れて！！おれバウアー大好き！！ラブ、ビッグラブ！エリックテンテンテンテン)｣

取り敢えず思いついた言葉の全部を詰め込んでバウアーに投げる。こういうときの俺の語彙力は素晴らしいほどにない。

けれどバウアーは何故か笑ってくれた。謎すぎるけど許してくれたと解釈をして取り敢えず一安心。

｢(ふは、面白いね！)｣

よく分からないけど面白かったなら良し。バウアーの通訳のはずの飯沢さんが今永先生の通訳になっている。先生はなんかずっと笑ってるけど放っておこう。

｢(ところで…Aは何でそんなに英語を話せるんだ？)｣

｢(おれの高校時代の同級生が凄く野球が上手かったの。プロはもちろん、メジャーで大活躍するんだろうなぁ、ってくらいにね。
おれはプロに行けるとはあんまり思ってなかったからドラフトで指名来なかったら、その同級生の通訳になろうと思って。メジャーに行くなら通訳さんは必須でしょ？だから英語は凄く頑張ったんだ)｣

懐かしい、高校時代の記憶。俺もありがたい事にプロからお声がかかって今プロ野球選手としてやってる訳だけど、指名されなかったら諦めていたと思う。

俺自身こだわってたのはプロ野球選手であることじゃなくて、野球をすることだったから、プロ野球選手になれないことに心残りはなかった。

まあ、こうして野球を職業にしてると毎日が楽しいから結果オーライではあるんだけどね。

｢(その人は僕も知ってる人？)｣

｢(うん！村上宗隆、ヤクルトの4番！！)｣

｢(あの村上か！)｣

納得したように頷くバウアー。

俺の憧れであり、ライバルであり、親友でもあるムネくん。いずれ世界で活躍するようになるであろう選手だ。

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