5 柳葉と大投手 ページ5
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「今永先生!今永先生!!ば、ばうわ、ば、ばば」
「うん、一旦落ち着こうか」
目線の先にはカメラを持って歩くバウアーが。たまたま喋っていた今永先生こと今永昇太さんに興奮気味に話しかける。
WBCの時に育てると決めた植物について色々と教えてもらう内に、いつしか先生と呼ぶようになった。
「先生はなんでそんなに落ち着いてるんですか!!バウアーですよ!トレバー・バウアー!サイヤング!!サイヤング!!!」
「知ってる知ってる。チームメイトなんよ」
落ち着いた様子で俺を落ち着かせる先生。そういえばDeNAだからチームメイトか。
メジャーに疎い俺でも知っているほどの大投手。そんな人が同じチームにいるなんて羨ましすぎる。
「そもそもA対戦したことある上にホームランまで打ってたよね」
「それはそれ!これはこれです!」
あれは完全にまぐれホームランだ。5月のDeNA戦で巨人は打線が大爆発し、バウアーから確か6点くらいもぎ取っていたと思う。
その中の一点が俺のソロホームランなのだが、あれはフライだと思っていたのがホームランになったものなので、俺自身は納得していない。
けど、あのバウアーからホームランを打ったことは俺の中での一生の自慢だ。
今永先生と俺、主に俺一人で騒いでいるとバウアーがカメラと通訳さんと共にやって来る。
「せ、せせせせんせい、!やばい、こっち来てません!?むり、オーラが、サイヤングのオーラが」
「サイヤングのオーラってそれもうイジってるやん」
やいのやいの言ってる内にバウアーが俺の目の前まで来て話しかけてくる。
バウアーの方が身長が高いから俺が見上げることになるんだけど、それにしても高いな。推定ギータさんくらいはある。
「(やあA。会いたかったよ)」
握手をしようと手を伸ばすバウアーに恐る恐る俺も手を伸ばす。
握手とかそれ以前に「会いたかった」という言葉が引っかかりすぎて何も頭に入って来ない。おかげで通訳さんのきれいな日本語訳も聞き逃してしまった。
なんとか頭を回転させて言葉を絞り出す。
「は、はろー?」
だめだ、まるっきり頭が回ってない。ぎこちなさすぎる俺にバウアーも苦笑していた。今永先生、にやにやしてるの見えてますからね。
何か喋らないと。せめて文章を、会話が広がるような文章を。
「(ホームランぶりですね)」
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作者名:カブ | 作成日時:2023年12月17日 0時