off ページ41
.
狭くて小さなアパートに生まれて８年。
いつからか、もう一人の僕が見えるようになった。
家の外がどんな世界なのかも知らないし、“あの人”と“母親”以外の人と会ったことがない。
…でも、それでも…。
沢山の人に囲まれて楽しそうに笑って、歌って、話して、ギターを弾いている僕が羨ましかった。
「…カイ、さんってどんな人なんだろ…」
“『兄貴頼りになるよほんとに！かっけぇの！いいでしょー？あははｗ』”
「いいなぁ…ぼくもその人に会ってみたい」
“『晴〜、弦ちゃん〜、景さ〜ん』”
「ハルさん…ゲンさん…ケイさん…？」
“『にひひｗｗいやいや分かるだろ！ｗｗ大分頑張ったぞ僕ｗｗ』”
「笑うってどんな感覚…？楽しかったら笑えるようになる…？」
“『明那さーん！不破さーん！た"す"け"て"ぇ"ぇぇぇ！！！お"ち"る"ー！！』”
「アキナさん…フワさん…？」
“『僕のライバー人生の背中押してくれた二人だから、いつか恩返ししたいなって思ってるわ〜』”
「いつか、ぼくにもそんな人ができるのかなぁ…」
知れば知るほど、あっちの世界がうらやましくってぼくは何度か家をとびだそうとしたことがあった。
もしかしたら外の世界にはぼくを笑わせてくれるような、やさしい人がいるのかもしれない、って。
でも結局母親に見つかっていつもどおり傷をたくさんつけられた。
ある日、家に開きっぱなしだったぱそこんを見るとメールが来ていた。
おそるおそる誰もいないことを確認して、ぼくはそれをそっと開いてみた。
“youtube___”
１文だけ、青い文字が書かれているのが出てきて無意識のうちにひらいてた。
【ライブストリームを始める】【はい】【いいえ】
らいぶすとりーむ…？
何もわからないまま、ただ何かが変わる予感がして急いで【はい】をえらんだ。
しばらくぐるぐると円が描かれて、待っている間に母親がドアを開ける音が聞こえた。
あぁ…またたたかれる…いたいのやだなぁ…。
でも何故かいつもより興味がなかったみたいで部屋を出てから、気づいたらすごいスピードで流れていく文字に、必死に助けを求めてた。
その流れる文字が止まって、歪んで、初めて泣いていたことにきづいた。
ねぇ、もう一人の僕。
ぼくにきづいて。たすけて。
.
【キャス】先輩とお泊まり会しにきたよ→←【切り抜き】某バンドマンの物語に触れるライバーたち
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小春川シノ | 作成日時：2022年8月1日 17時
