あれは、忘れもしない ページ2
俺は今し方殺した娼婦の死体を見ていた。
もしかして、この女もこうするしかなかったんだろうか。
久しぶりに、殺したことに罪悪感を覚えた。
目玉が落ちるんじゃないか、というくらい目が見開かれた生首。
人々を惑わせたそれも、恐怖に彩られて死んだ。
ただの肉塊と成り果てたそれを俺は今まで人形にしてきたが、今はそんな気にならない。
今はただ、勝手にフラッシュバックする過去が通りすぎるのを待つだけ...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺の故郷の『リヲルバ』は、豊かな土地ではなかったが、それでも村人の笑顔が絶えない平和な村だった。
日々畑仕事に勤しんで、時々父の人形作りを見たり、母から裁縫を学んだりした。
友達もいたが、俺は外より内で家族といる方が好きだった。
なんの変化もない小さな日常。
この村が変わらないように、俺も変わらずに、この村で死ぬものだと思った。
＿＿＿＿＿あの時までは。
帝国。
かつて領土を欲しいままに広げ、民や土地を殺してきた恐ろしい国だった。
あの頂点に立つ男は、『軍神』なんて呼ばれているが、あんなのがそうなら、神とは随分落ちぶれた生き物だ。
煙と、鉄の臭い。
飛び交う銃声と、逃げ惑う村人たち。
家に来た帝国兵を、父は勇敢にも鉈を持って立ち向かっていった。
呆気なく撃ち殺された。
心臓をたった１発。それだけで。
父は、一瞬で、死んだ。
母が涙を流しながら、俺の手を引っ張って村の出口へ走る。
震えを抑えるように握られた手は、異様なまでに力が入っていて、痛かった。
俺はとにかく母と共に走った。
遠くで、八百屋のおじさんが殺された。
友達が連れていかれた。
家が、燃やされている。
俺は涙なんて流す余裕がなかった。
ただ、強く繋がれた母の手を握り返して、転ばないように走るのが精一杯だった。
でも、やっぱり逃げ切れる筈がなくて
俺たちを見つけた兵が撃った。
それは不幸にも母の足に当たり、勢いよく俺たちは転んだ。
母が顔をあげて、｢逃げて｣と言うより早く、兵は俺たちを囲んで拘束した。
｢お願いです！どうか息子だけは！
息子だけは見逃してください！！お願いです！どうか！！どうか！！息子だけは放して！！！いや！！いやよ！！何でもするから！！
エルドラス！！
エルドラスーーーーッ！！！！！！｣
母があれほど叫んだのは始めて見た。
俺は愛されてたんだな、なんて思った。
それから俺たちは引き離されて売り飛ばされた。
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手ふぇち - 待っっっって・・・めっちゃ好き！！！ヤンデレサイコパス最高！！！！！！ (2021年9月19日 20時) (
レス) id: e31fa55851 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ - ルヴァンネさん» ルヴァンネさん自身も忙しいですものね。無理せず、これからも続けてくださると私的には幸せです。返信どうもありがとうございました！ (2018年10月27日 20時) (レス) id: 6d01fe97ff (このIDを非表示/違反報告)
ルヴァンネ(プロフ) - ましろさん» いいえ。人形師自体はまだ続きます。あと２回３回くらいで完結になるかと思いますが、現在は未定です。 (2018年10月25日 12時) (レス) id: d6627a81ed (このIDを非表示/違反報告)
ましろ - こんにちは。人形師に魅了され、以前から他作品も楽しく読まさせていただいている者です。質問なのですが、人形師シリーズが完結になっているのは、もう続編は作らないということでしょうか？人形師シリーズが好きすぎる故、気になります。 (2018年10月23日 20時) (レス) id: 6d01fe97ff (このIDを非表示/違反報告)
通草 - 人形師筆頭の男子のギャグ… 見たい (2018年8月19日 21時) (レス) id: 499fedeecd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルヴァ子 | 作成日時：2018年8月9日 12時
