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逆恨み【水無月】 ページ9

しかし、あの男は月光に化かされたこと、子どもたちに笑われたことを根にもっておりました。

『あの村にゃ、狐がいるぞ。人を化かして、人を殺そうとする狐がいる。あの村の人間は、狐と手を組んでやがるから、助けようとした俺の事を殺そうとした』

それを、周囲の村に言いふらしたのです。その根も葉もない噂は、やがて身分の高い人間の耳に入り──

男を筆頭に、化け狐をたちを殺そうと、人間たちが刀や農具を取ったのです。

その年は不運なことに、他の村が飢饉(ききん)であった、というのも相まって、狐たちをより一層、恨んだのです。

思い込みというのは恐ろしい。
人も我々も、窮地に立たされると、誰かを呪い、祟らずにはいられないのです。

それが、今回はあの村だった・・・・・・


狐の幻術に守られた村が、すぐに見つかることはなく、刀から妖力を隠すために、狐たちはその力を抑えておりました。

しばらくは平和な村だったのです。


──あれは、水無月の事でございます。


妖力を抑えても、刀を欺くことは、できませんでした。

村は、人間たちに見つかり、そして──


壊されてしまいました。


抵抗する術を持たない村人たちは、その虐殺に飲まれ、力を抑えていた狐たちは、男の刀の餌食になりました。

たくさんの村の人間たちが、小さな村の、やっとの思いで立て直した村を、壊していきました。

しかし、狐たちと村人たちは、月光だけはと、彼を森の社に閉じ込めて、封をかけたのです。

出してくれ、自分も皆と一緒に──!

その声は、届くことなく、森に消えていきました。

狐たちと村人たちが、月光を人間たちから隠したのは、彼が協定の証であるからです。

村が壊されても、自分たちが死んでも、その前にあった平和の証に傷を付けてはならない。
部外者に壊されるなんてとんでもない。

守ることができずとも、せめて隠し抜こう。
彼らの気が収まるまで。

やがて、悲鳴が聞こえなくなり、月光の耳に歓喜の声が聞こえてきました。

『裏切り者を殺したぞ!』
『これで村は平和だ!』
『やっと飢饉が、終わるぞ!』

その声が遠ざかって、消えていく様を、月光はどう思ったでしょう。

やがて、封の術も解け、社から出た月光が目にしたもの、それは──


村人と狐たちの変わり果てた姿と、壊された村でございました。

廃村の紅葉【文月】→←化け狐【皐月】



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リリー(プロフ) - ルヴァンネさん» 返信遅れました...ふ、フロチャでもう一回ですか!?あ、ありがとうございます!楽しみに待ってます! (2019年11月1日 19時) (レス) id: 74e525c1b3 (このIDを非表示/違反報告)
ルヴァンネ(プロフ) - リリーさん» これはあくまでプロローグ扱いなので、貴方様のリクエストはフロチャで再度消化させてください・・・こちらは夢主表現も曖昧なので・・・ (2019年10月20日 20時) (レス) id: c124615dbe (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - わあああああぁぁぁぁありがとうございますうううううぅぅ!!!リクエストお答えしていただいて、ありがとうございました!(*^^*) (2019年10月20日 20時) (レス) id: 74e525c1b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルヴァ子 | 作成日時:2019年10月20日 18時

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