叶わぬ思い ページ49
私の口から漏れた言葉に、妖の手が緩む。
私は咳込みながらも話しを続けた。
『……辛かったよね…苦しかったよね……ごめんね…助けて……あげられなくて…。』
「何故……お前が謝る…。お前は何をしたわけでもない…それなのに……。」
『同じ…人間だから…。そして……同じだから…私と……。信じて欲しい…愛して欲しい…その気持ちでいっぱいだったんだよね…?』
『あなたの気持ちは……痛いほど分かるわ…。あなたにしてしまったことは、謝りようがないのも分かってる…。』
『でも……もう…誰もあなたを傷つけたりしないわ。だって、こんなに優しいんだもの…。』
髪をそっと撫でれば、彼女は静かに泣いた。
静かに、綺麗な涙を流した。
人間はなんて勝手なんだろうか。
愛していると伝えたのに、都合が悪くなれば捨ててしまう。私も、そんな人間が嫌いだった。
「すまぬ……すまぬ人の子よ…。そうか。お前も、辛い思いをしたのだな……。」
そう言って、私の腕から抜けると頬を撫でてきた。
やはり、この妖は優しい。手つきがとても柔らかくて、優しい触れ方だ。
「だが、本当は私は幸せだったんだよ。あの人といれて、嬉しかったんだ。人間は憎い。だけど、どうしてだろうねぇ。」
「嫌いには、なれないんだ。」
『うん。分かるよ。私も、嫌いにはなれなかった。』
そう言って少し微笑めば、私の額に額を当てて、こう言った。
「お前が良ければ、私はお前の式となろう。もう一度、人を愛させてくれ。叶わぬ思いを、抱かせてくれ。」
『……私は女だよ?』
「そういうことではない。私はもう、悪しきものにはならないから、どうか、傍で守らせてください。」
彼女はそうして優しく笑った。
気がつけば、彼女の音はとても優しく美しいものに変わっていた。
これが、彼女本来の音。とても綺麗。
『私は、式をとらないんだ。だから、私の家族になりましょ?』
「っ……はい!主様!」
『やだなぁ。主様はよしてよ。私は穂ノ目Aよ。』
「ではA様。私の名はサヤギです。……ですがA様、一つお願いがあります。」
「私はこの地が好きです。大好きなのです。なので、式にしないのであれば、ここに残させてください。」
「あなたは穂ノ目涼子の孫なのでしょう?なら、私の音をその友人譜に綴ってください。」
その目からは、とても強い決心が見える。
ここに残るのは全然構わない。
けど、綴るという事の意味を理解しているの?サヤギ。
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世界の髪飾り(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!私も映画見てきました!父と母と3人で行きました!普段アニメを見ない母が見てみたいって言ってくれてすごく嬉しかったです!劇場でも夏目友人帳の世界を感じることができて感動しました! (2018年10月10日 20時) (レス) id: d6ecaec723 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - はじめまして!とても読みやすくて雰囲気もとっても好きです!これからも楽しみにしています!これからの更新もお待ちしております! (2018年9月20日 14時) (レス) id: 3cecd56ad6 (このIDを非表示/違反報告)
夏目大好きヤンデレ探偵 - とても続きが気になる (2018年8月17日 22時) (レス) id: 6cd51c2a27 (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - 支葵美乃さん» わざわざコメント、ありがとうございます。オリフラ外したと思っていたので、指摘して頂きありがとうございます! (2018年5月24日 15時) (レス) id: 4ffe17b14f (このIDを非表示/違反報告)
支葵美乃 - 夏目友人帳、大好きなので読んでいてとても楽しかったです!更新、頑張って下さい!!あと、オリフラ外した方が良いと思います…。 (2018年5月24日 15時) (レス) id: 48e064e18b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2018年5月23日 23時