穂ノ目友人譜【夏目友人帳】

逃走 ページ37

私が目を覚ましたら、そこはどこかの地下牢だった。

手は縄で縛られていて、解こうにも解けない。


後ろに縛られていないだけマシね……。噛み切ればいい話だもの。


それにしても、ここはどこかしら。多分的場さんの家か別荘なんだろうな。

紫水達は上手く逃げれたかな。私も、早くここから逃げなきゃ。


『なかなか噛み切れない……。』


手をずらしながら、縄をずっと噛む。するとほつれてきた為に、思いっきり噛み付けば切れた。

手首は擦れて赤くなっているけど、そんなの気にしない。


手元に私の荷物がないってことは、横笛と友人譜が的場さんの元にある。

早く見つけなきゃ…。


『出でませ出でませ。道を通るは熱にあらじ。雷にあらじ。裂くは銀。出でてうちませ。』


陣を袖の方に入れといたおかげで、牢を壊すことができた。

さて、探さなきゃ。


地下から出てみれば、そこはどこかの屋敷らしい。

的場さん、なんのつもりだ。面も外すなんて……顔がバレるなんて。


とりあえず、片っ端から部屋を開けていく。あまり音を出さぬように、小走りで当たりを見回してみる。


『どこに…どこに……！！』


あれは大事な祖母の遺品。そして何より、妖達の大切な音を預かってるんだ。

本当は祓い屋である私が持っていてはいけないのに、妖達は私を信用してくれてる。


それを裏切っちゃう。


屋敷内を走り回っていたら、的場さんの式と鉢合わせしてしまった。

掴まれそうになったのをすり抜け、急いで別な部屋に入り込む。


『……あ…私のポーチ…面もある…。』


その部屋の奥には、探していたものが全て揃っていた。

良かった…。ちゃんと中に友人譜もあるし、横笛も袋に入ってポーチに下げてある。


式が来る感じはしないし、すぐに出なきゃ。早く出て、帰らなきゃ。皆心配してる。


そう思って襖に手をかけたら、その手を何者かに掴まれた。


｢何処へ行こうというのです？穗ノ目さん。｣

『っ……！的場さん…！』



その人は的場さんだった。
逃げようと手を払おうとしたら、後ろから式に羽交い締めにされる。

どう足掻こうとも、その手を離してはくれない。


｢そう暴れないでください。私はあなたを的場一門に招き入れようとしようと。｣

『私は入りません！帰らせてください！！』

｢あなたの生い立ちを全て調べました。｣


その言葉に、ドクンと心臓が跳ねた。

調べた……調べたって……どういうこと…？一体どうやって…どこまで知ってるの……？

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