知っているから ページ8
次々に流れ落ちる涙を拭いながら、手紙が濡れないようそっと封筒にしまい、枕の横に置く。
私が守ることのできた、数少ない人々の一人である子が、こんなにも私を想ってくれているだなんて、思ってもいなかった。
洸汰君にだって、心配をかけさせてしまった。あの子の両親の時のように、私が死ぬのではないかという恐怖を、また与えてしまった。
それなのに、"たすけてくれてありがとう"って。"はやくげんきになって"って。
どこまで強く、優しい子なのだろう。
この子達の手紙は、私をヒーローにしてくれた。
"ありがとう"。
このたった五文字が、こんなにも嬉しくて、涙が溢れてくるものだったなんて知らなかった。
私だって、ヒーローを諦めるのは嫌だ。だけどそれよりももっと、大切な人達を傷つける方が嫌だった。
だから、諦めようとしたのに。
こうも温かい言葉をかけられてしまっては、その決心が揺らいでしまうではないか。
｢凍華ちゃん｣
未だに止まらない涙を必死に拭っている私の名前を、出久がとても優しい声で呼んだ。
｢さっきオールマイトも言っていたけど、君に助けられた命はたくさんあると思う。もちろん僕だってその一人だよ。
僕は、君に何回も助けられてきた。小さい頃から、今までもずっと。君のその個性で、僕は幾度となく助けられたんだよ。
だから、そんなに自分を責めないで。君の弟くんだって、その友達だってそう思ってるはずだ。
僕達は知ってるから。君がとても優しい人で、力を驕ることなく、人のために動くことができる人だって。
君が立派なヒーローだってことを、僕達は誰よりもよく知ってるから。
ここに君を責める人なんていないよ。だからさ、そんなに気に病まないで。大丈夫だから。それより、もっと僕達を頼ってよ。
僕は、君にたくさん助けられた。だから今度は、僕が君を助けたいんだ｣
真っ直ぐな瞳が、その優しい言葉が、私の胸に柔らかく溶けていく。
違う、違うよ出久。逆なんだ。私の方が君に…君達に、たくさん助けてもらっていたよ。
昔から、君のその強さにどれだけ勇気づけられたか。勝己の不器用な優しさに、どれだけ支えられていたか。
皆の前を向く姿勢が、どんな逆境も乗り越えようとするその決意が、私の背中も押してくれていたんだよ。
だから私は、ここまで頑張ってこれたんだ。
どんなに辛くても、その不幸を乗り越えよと頑張ってこれたんだよ。
お礼を言いたいのは、こっちの方なんだ。
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藍夜(プロフ) - 綾さん» コメントありがとうございます。1から読んでくださったことに加え、面白いと言って頂けてとても嬉しい限りです。最近忙しさのあまり、更新が出来なかったのですが、だいぶ落ち着いてきたので更新をしていこうと考えております。今しばらくお待ち頂けると幸いです。 (2021年9月12日 20時) (
レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
綾 - もし、このコメントが目に留まっているのなら出来れば更新していただいたら嬉しいです。１から全て読んだのですがとても面白く、更新するのがきついのなら本当良いんですけど (2021年9月12日 19時) (レス) id: 38063781d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍夜 | 作成日時：2021年3月21日 17時
