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第伍話 ページ9

私はまた流れ出てくる涙を必死に拭う。


何度謝っても謝りきれないほどだ。


私も同じことを体験したから、痛いほど竈門くんの気持ちはわかる。

後悔しても、もうそれはどうにもならないのだけど、悲しくて仕方がない。


そんな私を見た竈門くんは、心配そうに私を見つめてきた。


「どうした?何かあったのか?」

『……ごめんね……!本当にごめんなさい……!!私がもう少し早く来ていれば…こんなことには……!!』


過ぎたことをいつまでも考えていたら、前に進めない。何も始まらない。

けれど、謝らずにはいられない。
彼の大切なものを、守れなかったのだから。


「…東雲さんは悪くないよ。大丈夫。こうして手伝ってくれただけで、俺は嬉しい。」


彼は自分が一番辛いはずなのに、そう言って私の頭を撫でながら笑った。


……なんて、優しい子なんだろうか。


泣き出したいのは君の方だろう。
辛くて仕方ないはずだろう。


強いんだね、君は。


誰よりも強く、優しい心の持ち主だ。


暖かく周りを照らす、そう、太陽みたいな人。


『……竈門くんは、優しいね。』

「そうかな。東雲さんの方が優しいと思う。東雲さんからは、ひどく優しい匂いがするから。」


匂い……。

彼は鱗滝さんみたいに鼻が利くのだろうか。


その事などは道中に聞くとして、これ以上泣いてはいられない。

涙を無理やりにでも抑えて、竈門くんと共に手を合わせる。


助けてあげられなくてごめんなさい。
どうか、安らかに眠れますように。

そして、竈門くんと禰豆子ちゃんを見守っていてあげてください。


次に生まれてくる時も、また彼らと家族になれますように。


こんな悲しいことに、なりませんように。


合掌を手向け終え目を開けば、竈門くんがこちらをじっと見つめていた。


『どうかしたの?』

「いや、他人なのに随分と長い間、合掌を手向けてくれるんだなって。」

『他人だからって、命を無下にするようなことできないからね。

それにね、お願いしたの。


次に生まれてくる時も、竈門くん達と家族になれますようにって。


仏様がいらっしゃるかなんて、わかんないけどね。』


そう言って微笑めば、彼はその綺麗な瞳に涙を溜め笑った。


「本当に、優しいな。東雲さんは。」


私は、君ほど優しくなどないのに。

そう思ったが、彼が妹の手を握り行こうと口にしたため、それは口にしなかった。


彼は一度我が家を振り返り、それからもう二度と、振り返ることはなかった。

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masa - コスプレイヤーとして演じる程,隠がお気に入りです!闘える隠もいるはずと信じているので,この作品が大好きです!正に本編そのもの!東雲ちゃんも大好きです! (2021年1月7日 1時) (レス) id: 8a22c9168c (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 無限列車編、楽しみです!煉獄さんンンンン!!!!!!!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: 5eabcf99e7 (このIDを非表示/違反報告)
R_yomoya(プロフ) - めっちゃさいっこうです!無限列車編はどうなるのか…! 煉獄さん生存ifであることを祈っています…! (2021年1月5日 14時) (レス) id: 241a1cc2c3 (このIDを非表示/違反報告)
天深 - とても好きな作品でした(;_;) (2020年1月24日 16時) (レス) id: 456e47df85 (このIDを非表示/違反報告)
すンず - めっちゃ最高!!頑張って下さい!応援しています! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 6823c0d55a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年10月6日 13時

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