第肆話 ページ8
義勇さんが何か言いたげにこちらを見つめてくる。
全く、この人は言葉足らずで困る。これだから周りからの誤解も生まれるというのに。
『そんなに驚くこともないでしょう。私がいた方が、鱗滝さんもわかりやすいと思ってのことです。それに、道中何かあっては困りますから。』
「それもそうだが、仕事はどうするつもりだ。」
『その事に関しては、御影に御館様へと報告をしてもらうので、任務が入れば御影から教えてもらい、私はそちらに向かいます。
それに、この兄妹のことを見届けたいんです。
私が成し得なかったことを、この兄妹なら成し得てくれると思ってるので。』
その言葉を聞いて、まだ少し納得はいっていないようだが、義勇さんは折れてくれた。
御館様への手紙をその場で手短に書き、御影に持たせて報告に行かせる。
これから長期間に渡って、私は彼らと行動を共にしたい。
お許しが出たなら、隠の任務と平行でやらせて頂こう。
義勇さんはじっと私を見つめたあと、また彼の方を向いて口を開いた、
「今は日が差していないから大丈夫なようだが、妹を太陽の下に連れ出すなよ。」
それだけ言い残して、義勇さんは去っていった。
……相変わらず表情が乏しいなぁ。だけど義勇さんは優しいし、良い人だから嫌わないであげてほしい。
『君、大丈夫?痛むところとかある?』
「ああ、いや、ないけど……君は誰だろう。」
『私は東雲A。さっきの人と同じ、鬼殺隊の者だよ。君は……竈門、炭治郎くん…だね?』
「どうして俺の名前を……」
『君が君の記憶の中でそう呼ばれてたから。』
そう言えば、彼___竈門炭治郎くんは首を傾げた。
いきなり記憶だなんだと話をされれば、誰だってそうなるだろう。
まあでも、今は一刻も早くここから立ち去るべきかな。太陽が出てきたら、妹さん__竈門禰豆子ちゃんが大変だもの。
『さて、早く行こう。日が出てきたら大変だからね。』
「あ!待ってくれ!家族を、俺の家族を、埋葬させてくれ。」
そう言って竈門くんは深く頭を下げた。
……そうだね。埋葬してあげなくちゃ。
『うん。私も手伝っていい?』
「手伝ってくれるのか…ありがとう。」
それから三人で家に戻り、彼の弟妹や母の身を清め、土に埋めた。
その作業をすることで、私の頭に次々と記憶が流れ込んできた。
とても楽しそうな記憶だった。
貧しいけれど幸せに満ちていて、見ているこっちが暖かくなる。
そんな、家族だった。
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masa - コスプレイヤーとして演じる程,隠がお気に入りです!闘える隠もいるはずと信じているので,この作品が大好きです!正に本編そのもの!東雲ちゃんも大好きです! (2021年1月7日 1時) (レス) id: 8a22c9168c (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 無限列車編、楽しみです!煉獄さんンンンン!!!!!!!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: 5eabcf99e7 (このIDを非表示/違反報告)
R_yomoya(プロフ) - めっちゃさいっこうです!無限列車編はどうなるのか…! 煉獄さん生存ifであることを祈っています…! (2021年1月5日 14時) (レス) id: 241a1cc2c3 (このIDを非表示/違反報告)
天深 - とても好きな作品でした(;_;) (2020年1月24日 16時) (レス) id: 456e47df85 (このIDを非表示/違反報告)
すンず - めっちゃ最高!!頑張って下さい!応援しています! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 6823c0d55a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年10月6日 13時