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第四拾肆話 ページ48

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「わかりませんお館様。人間ならば生かしておいてもいいが、鬼は駄目です。承知できない。」


そう言うと実弥さんは自分の腕を斬りつけ、鬼という物の醜さを証明すると言い、禰豆子ちゃんの箱の上に血を垂らした。


……まずいわね。実弥さんの血は稀血だから、普通の人よりも遥かに美味しそうに見えるだろう。

いくら暗示があるからとはいえ、危険かもしれない。


小芭内さんから日なたでは駄目だと指摘を受け、屋敷の中へ足を踏み入れた実弥さんを見て冷や汗が背中をつたった。


「禰豆子ォ!!やめろーっ!!!」


そう叫んだ炭治郎を、小芭内さんが押さえつける。

その間にも、禰豆子ちゃんは実弥さんに刺されている。


それでも私は、その場から動くわけにはいかなかった。


今禰豆子ちゃんを助ければ、禰豆子ちゃんは人を襲わないということを証明する機会を失ってしまう。

かと言って助けないのも心が痛い。


どうしたものかと悩んでいるうちに、禰豆子ちゃんが箱から姿を現した。


その息は荒れ、必死に抗っているように見える。


禰豆子ちゃんお願い。そのまま耐えて。耐えなければ、君の兄は腹を切らなければならないのよ。

少しの辛抱だから、お願い。


私が両の手を握りこんだ時、炭治郎の唸るような声が聞こえて目を向ければ、小芭内さんに押さえつけられながらも動こうとしていた。

今にも血管が破裂しそうで、しのぶさんの制止する声も聞こえる。


私がどうしようかと迷っている時、義勇さんが小芭内さんの腕を掴んだ。


そして動けるようになった炭治郎は縄を引きちぎり、こちらに走ってくると、禰豆子ちゃんの名を叫ぶ。


するとその瞬間、禰豆子ちゃんは実弥さんから顔を背けた。


私が安堵から少し息をつくと、禰豆子ちゃんは私の存在に気づいたのか、こちらに歩いてくる。

私は日が当たらぬよう屋敷の奥へ足を進め、未だ息の荒い禰豆子ちゃんを抱きしめた。


すると禰豆子ちゃんは少し安心したのか、私に擦り寄りながら抱きしめ返してくる。

そのまま頭を撫でていたら、いつの間にか瞳から涙がこぼれ落ちていた。


ああ、良かった。安心した。


『ごめんね、痛かったよね、ごめんね…。』


御館様の前だというのに涙を流す私を、禰豆子ちゃんは心配そうに覗き込んでその涙を拭ってくれる。


禰豆子ちゃんはやっぱり優しい子だね。
自分の方が辛いはずなのに、慰めてくれるの?

ああ、なんて暖かい。


そんな光景を、皆はただ静かに見守っていた。

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masa - コスプレイヤーとして演じる程,隠がお気に入りです!闘える隠もいるはずと信じているので,この作品が大好きです!正に本編そのもの!東雲ちゃんも大好きです! (2021年1月7日 1時) (レス) id: 8a22c9168c (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 無限列車編、楽しみです!煉獄さんンンンン!!!!!!!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: 5eabcf99e7 (このIDを非表示/違反報告)
R_yomoya(プロフ) - めっちゃさいっこうです!無限列車編はどうなるのか…! 煉獄さん生存ifであることを祈っています…! (2021年1月5日 14時) (レス) id: 241a1cc2c3 (このIDを非表示/違反報告)
天深 - とても好きな作品でした(;_;) (2020年1月24日 16時) (レス) id: 456e47df85 (このIDを非表示/違反報告)
すンず - めっちゃ最高!!頑張って下さい!応援しています! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 6823c0d55a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年10月6日 13時

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