第卅伍話 ページ39
そのまま少し廊下を歩いていると、炭治郎がある一室の前で立ち止まり、静かにするようにと人差し指を自身の口に当てた。
それに頷くと、炭治郎は勢いよく襖を開ける。
するとそこには、一人の男の子がいた。
「清兄ちゃん!!」
私達を見た瞬間、血相を変えて持っている鼓を叩こうとしていた手が、そのてる子ちゃんの声により宙に留まる。
てる子ちゃんをそっと降ろしてやれば、兄の元へとかけていった。
「そっ、その人達は……」
「俺は竈門炭治郎。悪い鬼を倒しに来た。」
『私は東雲A。炭治郎と同じ目的でここに来たのよ。さぁ、傷を見せて。独りでよく頑張ったね。』
そう言って、私が持っていた包帯と炭治郎が持っていた鱗滝さんの薬で、清くんの怪我を手当してあげた。
それが終わってから、私は静かに清くんの手を借りる。
『ごめんね清くん。少し、記憶を見せてね。』
「え…う、うん…。」
戸惑いながらも頷いてくれた清くんに微笑み、そっと目を閉じて意識を集中させた。
そうすれば、清くんの身にいったい何があったのか。それらが鮮明に見えてきた。
『…なるほどね。君が稀血だから、誰が君を食うかで鬼共が殺し合いをして、さっきの鼓の鬼がやられた時にその鼓を落とし、それを叩いて今まで凌いできたと。』
「そうだ!そう…俺のことマレチって呼ぶんだ!」
「稀血……?なんだ、それ。」
「カァーア!!稀血トハ!!珍シキ血ノ持チ主デアル!!」
どこからか入ってきたのか、炭治郎の鎹鴉が大きな声でそう言った。
鎹鴉の説明で、己の血が鬼にとってご馳走だと理解した清くんが、てる子ちゃんと共に震え始める。
そんな二人を優しく撫でていれば、微かにだが鼓の鬼の色が見えた。
「俺はこの部屋を出る。A、二人を頼めるか?」
『良いけれど…炭治郎は一人で行くの?怪我も酷いというのに。』
「ああ。それに、俺よりも強いAがいた方が、二人も安心だろう。」
そう言った炭治郎の瞳からは、強い意志が見て取れた。
私はそれに対し静かに頷き、清くんに炭治郎が部屋から出たら鼓を叩くよう指示をした。
そして襖から少し鬼の姿が見えた瞬間に、炭治郎は部屋の外へと走り出た。
『叩け!!』
私の声と共に清くんが鼓を叩けば、部屋の場所が変わる。
炭治郎のこともいささか心配ではあるが、今は信じて、この子達を守りながら炭治郎を待つのみ。
その間に、この子達の不安を少しでも取り除いてあげないと。
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masa - コスプレイヤーとして演じる程,隠がお気に入りです!闘える隠もいるはずと信じているので,この作品が大好きです!正に本編そのもの!東雲ちゃんも大好きです! (2021年1月7日 1時) (レス) id: 8a22c9168c (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 無限列車編、楽しみです!煉獄さんンンンン!!!!!!!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: 5eabcf99e7 (このIDを非表示/違反報告)
R_yomoya(プロフ) - めっちゃさいっこうです!無限列車編はどうなるのか…! 煉獄さん生存ifであることを祈っています…! (2021年1月5日 14時) (レス) id: 241a1cc2c3 (このIDを非表示/違反報告)
天深 - とても好きな作品でした(;_;) (2020年1月24日 16時) (レス) id: 456e47df85 (このIDを非表示/違反報告)
すンず - めっちゃ最高!!頑張って下さい!応援しています! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 6823c0d55a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年10月6日 13時