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第卅弐話 ページ36

善逸に聞こうとその方向を向いた時、茂みの方に女の子と男の子が立っていた。

酷く怯えた色をしていて、怖がらせないように静かに近づく。


「じゃじゃーん。手乗り雀だ!!可愛いだろ?」


私の横にいた炭治郎が、善逸の雀を手に乗せて見せてやれば、二人は気が抜けたのか、その場にへたり込んだ。


『何かあったの?そこは二人のお家?』

「ちがう…ちがう…ばっ…化け物の家だ…。兄ちゃんが連れてかれた。夜道を歩いてたら。俺達には目もくれないで、兄ちゃんだけ…。」


お兄さんだけ?他に目もくれないだなんて、その子は何か特別だったに違いない。

それこそ、一人食べるだけで五十人、百人人を食べたことになる、稀血のような。


「大丈夫だ。俺達が悪い奴を倒して、兄ちゃんを助ける。」

「ほんと?ほんとに…?」

『ええ、きっと…』

「炭治郎、Aちゃん。なぁ、この音何なんだ?気持ち悪い音……ずっと聞こえる。鼓か?これ…」

「音?音なんて……」


家に目を移し、音に集中してみようとしたら、いきなり部屋から人が放り出された。

咄嗟に動き、既のところで彼を抱きとめる。


傷が深い……!これは、このままだと……


「出ら…せっ…かく…あ…あ…出られ…たの…に…外に…出ら…れた…のに……死…ぬ…のか…?俺…死ぬ…の…か。」


そうこぼす彼に、何も出来ない私はただ強く彼を抱きしめた。

それと同時に、物凄い雄叫びが家の中から聞こえてくる。おそらく、ここにいるであろう鬼の声だ。


徐々に冷たくなっていくその人の体温が、父の腕の中で亡くなっていた、弟のことを思い出させる。


「に、兄ちゃんじゃない……兄ちゃんは柿色の着物きてる……。」


その声にハッとして、私は記憶の渦から抜け出した。

そっか。もう何人もここに捕まっていたのね。


腕の中で眠るその人を静かに寝かせ、何度も謝りながら合掌を手向けた。


「A、善逸!!行こう!」


そう言った炭治郎に対して頷き、そっと兄妹に近づいて目線を合わせてしゃがんだ。


『大丈夫。君達のお兄さんは、必ず救けてあげるからね。』


私がそう微笑むと、善逸を相手していた炭治郎が、二人のそばに何かあっても守ってくれるからと、禰豆子ちゃんの入った箱を置いた。

そして私達三人は、禍々しい雰囲気の家に足を踏み入れる。


怯える善逸に、炭治郎の怪我が完治していないという事が追い討ちになり、余計に善逸が騒がしくなる。


……私も怪我してること、黙っておこう。

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masa - コスプレイヤーとして演じる程,隠がお気に入りです!闘える隠もいるはずと信じているので,この作品が大好きです!正に本編そのもの!東雲ちゃんも大好きです! (2021年1月7日 1時) (レス) id: 8a22c9168c (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 無限列車編、楽しみです!煉獄さんンンンン!!!!!!!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: 5eabcf99e7 (このIDを非表示/違反報告)
R_yomoya(プロフ) - めっちゃさいっこうです!無限列車編はどうなるのか…! 煉獄さん生存ifであることを祈っています…! (2021年1月5日 14時) (レス) id: 241a1cc2c3 (このIDを非表示/違反報告)
天深 - とても好きな作品でした(;_;) (2020年1月24日 16時) (レス) id: 456e47df85 (このIDを非表示/違反報告)
すンず - めっちゃ最高!!頑張って下さい!応援しています! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 6823c0d55a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年10月6日 13時

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