第卅話 ページ34
それから珠世様は毬の鬼から血を取り、禰豆子ちゃんを診に中へと入っていった。
炭治郎と私は、愈史郎にあてがわれた布で口元を覆いつつ、毬の鬼の方へと向かった。
『……毬だよ。』
「遊…ぼ…あそ…」
小さい子供みたいに、繰り返されるその言葉。
たくさん人を殺しているだろうに。
十二鬼月とおだてられ、騙され戦わされ、終いには鬼舞辻の呪いで殺された。
救いがない……死んだ後は、骨すら残らず消える。人の命を奪った報いなのだろうか。
鬼舞辻無惨。自分を慕う者にすらこの仕打ち。
まさに、本物の鬼だ。
『…炭治郎。十二鬼月は、これよりももっと強いからね。』
「…ああ、わかってる。精進するよ。」
それから私達は、珠世様のいる地下に降りた。
走りよってきた禰豆子ちゃんは、炭治郎と私を抱きしめた後、珠世様にまで抱きつきに行った。終いには愈史郎の頭まで撫でている。
あの心底嫌そうな顔。あれが珠世様の手だったら、失神していてもおかしくないだろうに。
「先程から、禰豆子さんがこのような状態なのですが…大丈夫でしょうか。」
「大丈夫です。多分二人のことを家族の誰かだと思っているんです。」
「しかし、禰豆子さんのかかっている暗示は、人間が家族に見えるものでは?私たちは鬼ですが…。」
『でも、禰豆子ちゃんは人間だと判断していますよ。だから守ろうとした。』
「俺…禰豆子に暗示かかってるの嫌だったけど、本人の意思がちゃんとあるみたいで良かっ…」
そこまで言った時、珠世様の瞳からは涙がこぼれ落ちた。
……きっと珠世様は、人でなくなってしまったことが、酷く辛く、苦しかったのだろう。
だからきっと、嬉しかったんだろうなあ。
それから珠世様は、禰豆子ちゃんが離れると、この土地を去って身を隠すというのを伝えてくれた。
「炭治郎さん。禰豆子さんは、私たちがお預かりしましょうか。」
「え。」
「絶対に安全とは言いきれませんが、戦いの場に連れて行くよりは危険が少ないかと。」
…確かに、そうだろう。でも、最後の兄妹なんだから、一日でも多く、共に過ごして欲しい。
それこそ、いつ死ぬかもわからないのだから。
「…ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます。離れ離れにはなりません。もう二度と。」
そう言った炭治郎に少し安堵し、挨拶をしてその場を去ろうと背を向けた時、愈史郎が炭治郎の名を読んだ。
「お前の妹は、美人だよ。」
全く、素直じゃないんだから。
247人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
masa - コスプレイヤーとして演じる程,隠がお気に入りです!闘える隠もいるはずと信じているので,この作品が大好きです!正に本編そのもの!東雲ちゃんも大好きです! (2021年1月7日 1時) (レス) id: 8a22c9168c (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 無限列車編、楽しみです!煉獄さんンンンン!!!!!!!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: 5eabcf99e7 (このIDを非表示/違反報告)
R_yomoya(プロフ) - めっちゃさいっこうです!無限列車編はどうなるのか…! 煉獄さん生存ifであることを祈っています…! (2021年1月5日 14時) (レス) id: 241a1cc2c3 (このIDを非表示/違反報告)
天深 - とても好きな作品でした(;_;) (2020年1月24日 16時) (レス) id: 456e47df85 (このIDを非表示/違反報告)
すンず - めっちゃ最高!!頑張って下さい!応援しています! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 6823c0d55a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍夜 | 作成日時:2019年10月6日 13時