当麻と出久 ページ7
それから少し、出久と試合を見ながら話をする。
『……私、母さん達死んでから、誰かが傷ついたりするの見たくないの。こんな場で言うのも変だけどね。
でも、本当に君のは怖い。いつか君が、取り返しのつかないことになりそうで。
……私の知ってる子で…とても無茶をする子がいたの。君みたいに、誰かを救けたい一心で。
その子は何度も危ない橋を渡って、人を救けてきた。
救けようとする度に怪我を増やして……すごく心配してたんだ。
今その子は遠くにいるから分からないけど、今もそのために戦ってると思う。
君はその子によく似ているから、尚更心配になるんだ。ごめんね、こんなお節介焼きで。』
そう言って笑えば、出久はううんと言って俯いてしまった。
ごめんね。君を当麻と重ねてしまって。君はまるで別人なのに。
君を見ているつもりでも、私は気づいたら当麻を見ている。
『っ……ごめんね…いっくん……。』
私の目からは涙が出てきて、必死に拭うも止まらない。
君は大切な幼馴染だ。だから、君のことをしっかり君として見つめたい。
神様が言っていた私のやりたいことをやり終えたら、私は君をちゃんと見れるだろうか。
君を当麻に重ねるんじゃなくて、緑谷出久として見れるだろうか。
｢なんで凍華ちゃんが泣くの？謝りたいのは僕の方だよ。
ごめんね、心配かけちゃって。僕、心配かけないようにちゃんと強くなるから。そして、凍華ちゃんを守れるようになる。
だから、泣かないで？｣
ああ！拭えないんだ……！！
なんて、かっこいいこと言ったあとにアワアワしだす。
でも、違うんだ。
『違う……！そのことじゃないんだ…！！私は……私は君を……』
｢重ねちゃってるんでしょ？その子と。気にしないで。僕は平気だから。
その子のように無茶してるのは僕だし、君が重ねてみてもしょうがないんじゃないかな。
凍華ちゃんが僕を僕と見てくれるように、君に心配をかけないから。｣
そう言って出久は笑った。
その笑顔がとても輝いて見えて、私の心は何故かすっと軽くなった。
それと同時に終わりの声がかかる。
目を強く擦り、出久に笑いかけた。
『ありがとう！！私、何だか心が軽くなった！！頑張ってくるから、見ててね！』
｢う、うん！頑張って！｣
出久のこと、ついついあだ名で呼んじゃったなぁ。
私もまた、君に救けられちゃったね。
『っし！私も頑張らないと！！打倒轟君！！』
本当に、ありがとう。いっくん。
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作者名：藍夜 | 作成日時：2019年1月19日 23時
