お礼 ページ28
あれから二日過ぎた今日。要するに、職場体験三日目だ。
病院に運ばれてすぐに目が覚め、一応一日様子を見て今日退院。
『ご迷惑をおかけしてしまい、すいません。』
｢まったくだな。お前はまだただの学生だ。出過ぎた真似を…。｣
｢おい。こいつのおかげで助かった命も多いのに、ふざけたこと言ってんなクソ親父。｣
『お、おおお落ち着きなよ轟君…！』
そう宥めながらも、早く目が覚めたことを少し喜びつつ、当麻の所に行けなかったのを残念に思う。
こう思うのなんて、おかしなことなんだろうけど。
しばらく壮絶な親子喧嘩(？)を繰り広げていたら、事務所に一組の親子が入ってきた。
どうやら、一昨日の事件で子供を私に助けてもらったことをお礼しに来たらしい。
｢先日は助けていただき、ありがとうございました…！この子が人質にされた時、本当に怖くて怖くて……。それに、貴方もまだ学生さんなのに、大変だったでしょう？本当に、ありがとうございました！｣
そう言って、深々と頭を下げるお母さん。
私はまだまだなのに、そんなお礼されるだなんてね。こちらこそ、お礼をしたいくらいだ。
『そんな、ヒーロー志望として当然のことをしたまでですよ。それに、私は助け出したあとすぐに倒れてしまいました。それで多くの人に心配をかけたと思います。
でも、それじゃ駄目なんです。
笑って立って、みんなを安心させてから、一人になって倒れるものだも思うんですよ、ヒーローって。オールマイトが例ですかね。
だから、私はまだまだ未熟なんです。それでも、わざわざお礼を言いに来て下さり、ありがとうございます。
お二人共、無事で何よりです。』
そう言って微笑めば、お母さんは目に涙を溜めながら、小さく笑った。
すると、今まで目をキラキラさせて私を見つめていた女の子が、一歩前に出て興奮したように話し出した。
｢お姉ちゃん！助けてくれてありがとう！！お姉ちゃんすごくかっこよかったよ！！私も将来、ヒーローになりたいなぁ！｣
『本当？ありがとう。君が素敵なヒーローになれるよう、私も応援してるね。』
そう言えば、女の子は少し下を向いてしまった。
｢……でもね、私、無個性なの。それで、皆がヒーローにはなれないって……。｣
"無個性のくせにヒーロー気取りかデク！！"
"てめェが何をやれるんだ！？"
……結局、どの時代も同じようなものなのね。
『私は、なれると思うな。』
そう言って、その子の頭を撫でた。
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作者名：藍夜 | 作成日時：2019年1月19日 23時
