45話 ページ46
ミスズside
あの後、私はまだ悩んでいた。
犬神「悩み事かい?」
ミスズ「…お父様」
中庭の風景をぼんやりと見つめていた私の隣に座るお父様。
ミスズ「どうしてそう思ったの?」
犬神「君の後ろ姿が寂しそうだった」
ミスズ「そう?…ねえお父様」
犬神「何?」
私と同じ色彩の目が私を見る。透き通った目に見つめられると、嘘を吐けない気持ちになる。
ミスズ「…お父様は、
、
、
お母様と結婚する事が怖くなかったの?」
犬神「…それはまた随分…」
返答次第ではお父様の命が危ない。
犬神「まあ確かに、種族の差には悩んだよ。
人間と妖怪が共有出来る時間は極僅かだ。それに、人間は脆い。ちょっと病が流行れば死ぬ」
(やっぱり、間違いなの?私の答えは二人のためにはならないの?)
少し暗くなった私の気持ち。うつむく私。
でも、とお父様が続けた。
犬神「それでも桜と生きたかったんだ」
幼い程素直すぎる声。
思わずお父様を見る。お父様は月を見ていた。
犬神「禁忌を侵してでも彼女が欲しかった。彼女さえいれば他に何もいらないと、生まれて初めて思った。
それに、彼女も僕と生きる未来を望んだからね。月夜の晩に桜をさらった」
ミスズ「お母様が今現在まで生き続ける確証も無かったのに?」
犬神「幸い僕は犬神だ。僕の寵愛を受けたからか今もあの頃の姿のまま、僕の隣で笑ってる」
優しい表情になるお父様。でも、その目が何だか濡れて見えた。
犬神「…君がどうしてこんな事を聞いたかは詮索しないよ。聞いてほしくないんだろう」
ミスズ「…ごめんなさい」
犬神「謝る事無いだろう」
お父様は苦笑して、私の頭を撫でた。
犬神「案外、うまくいくと思うよ」
ミスズ「…そう、かしら。
本当にうまくいくかしら。私はまだ半人前なのに」
犬神「そうだよ、まだ半人前だ。
だから励みなさい。君の望む未来はそうしないと手に入らないからね」
ミスズ「…うん」
視線を桜に戻す。
散る花びらは耐える事が無い。なのに花は枯れない。
犬神「相談したくなったらいつでもお
優しく笑うお父様を見ると、安心すると同時に泣きたくなって、慌てて下唇を噛んだ。
ミスズ「…うん。お父様、ありがとう」
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ayanyanm(プロフ) - エンマさん» 教えて下さり、ありがとうございます!訂正致します! (2018年10月23日 23時) (レス) id: c2c48d4c6b (このIDを非表示/違反報告)
エンマ - 読書が、読者になってますよ!! (2018年10月23日 23時) (レス) id: b6e961ac32 (このIDを非表示/違反報告)
ayanyanm(プロフ) - 月兎さん» コメントありがとうございます!主人公の正体を近々明かすつもりなので、どうか楽しみにしていて下されば嬉しいです!! (2018年10月6日 22時) (レス) id: c2c48d4c6b (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - すっごく面白いです。主人公さんが気になります。更新頑張ってくださいね。 (2018年10月6日 22時) (レス) id: 77e594bc29 (このIDを非表示/違反報告)
ayanyanm(プロフ) - 大福さん» ありがとうございます!そんな事を言って頂けるなんて…!!光栄です!これからも頑張ります! (2018年9月9日 10時) (レス) id: c2c48d4c6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無彩色乙女 | 作成日時:2018年9月8日 23時