最凶のヴィラン大航海時代にトリップしました2 (ページ5)

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第53話ページ5

『よォ』

窓の外から子供達の笑い声が聞こえる執務室に、つい数週間前に聞いた事のある声が響いた。

「！？ユエかよい！？」

窓の縁から室内に侵入すると、不死鳥が椅子から立ち上がる。

『あァ。そろそろ起きる頃だと思ってな』

「丁度一昨日起きた所だよい」

マジかよはえェなと零す俺に不死鳥は苦笑いを浮かべ、"エース"と窓の外に向かって名前を呼んだ。
ここは不死鳥が海賊を引退して始めた孤児院。親がいない孤児たちを引き取って世話をしているらしい。本当、よくやるよ。

「あんたがユエか！」

人懐っこい満面の笑みを浮かべているこの男、本当につい先日まで死んでいたのかと疑うほど元気そうだ。なんならさっきまで孤児院のガキと走り回っていた。

『あァ...そうだ。そんだけ元気そうなら問題ねェな』

そう言うと火拳もといエースは少し俯き、直ぐにバッと顔を上げた。

「俺、あんたにずっと礼が言いたかったんだ！この恩は一生忘れねェ！本当に、ありがとう！」

『.....ただの気まぐれだ。気にすんな』

「そういう訳にはいかねェよ」

ヴィランになってから、礼を言われるなんて事初めてだ。

『...傷はどうなんだ？』

「傷か？全然大丈夫だ！このとお…ｳｯ！」

エースが腕を大きく上にあげると、怪我にさわったのか呻き声を上げてうずくまった。

『痛ェんじゃねェか』

「おいエース！あんまり動くなと言っているだろうよい！」

「マルコは大袈裟なんだよ！」

『いやお前死んでたんだから当たり前だろ』

「ユエの言う通りだよい！」

「ｳｯ、ハイワカリマシタ」

エースも恩人からの言葉を突っぱねる程の冷酷さは持ち合わせていないため素直に従うことにした。

『言っとくが、今お前の体はほとんどが俺の炎によって賄われてる状態。勿論元の体には近づけたが...少しぐらい脆くなってる所があるかもしれねェ。これはお前の弱点だ』

「弱点...」

今、エースの胸元には黒炎が詰められている。そして使えなくなった皮膚にも黒炎を代用しているため、傷がとても目立っているのだ。
少なくとも皮膚が伸びるまで胸元を露出するのは避けた方がいいだろう。

『まあ、ある程度の攻撃は耐えられるが...すぐに修復するようにはしといてやるから気をつけろ』

すると、不死鳥もといマルコが訝しげに口を開いた。