縁下力 ページ7
「佐藤ー悪いんだけどこれ縁下まで届けてもらっていいか?」
「え、私ですか?」
「あいつのノートだけ俺の机に置き去りにされてたみたいでさ、ほらないと困るかもしれないけどこれから職員会議だからさ!どうせ部活入ってないしこのまま帰るだったらちょっと体育館に寄っててくれよ」
「えー…まあいいですけど」
縁下くんって確かバレー部だったよね。うちの学年のバレー部って言えば田中くんとか西谷くんとか結構騒がしい人達がいたっけ。なんか縁下くんと正反対な感じするなあ。
「えーっとバレー部はここで練習中か」
んー部員じゃないけど先生に頼まれたし入っても大丈夫だよね?でも主将さんとかに怒られたらどうしよう…。
「…ん?あれもしかして佐藤さん?」
「あ、縁下くん。丁度いい所に」
入り口で唸っていると縁下くんが気付いてくれたみたいだ。…わーなんか爽やかな運動部員って感じ。
「先生が縁下くんのノートだけ返し忘れてたみたいで渡しておいてって言われたの」
「えっわざわざ届けてくれたのか…ありがとう」
「まあ縁下くんと違って部活に入ってる訳じゃないから暇だしいいけどね」
そうなんだと言って笑う縁下くんは思ったより可愛らしい顔でドキっとした。…これがギャップってやつか。
「あっ危ねぇ!!!避けてくれ!!!」
「え?」
声のした方を見るともの凄い勢いでボールが近付いてきてる。え、バレーボールってこんなはやいの。絶対こんなのあたったら痛いじゃん避けないと。体ではそう分かっているのに恐怖からか私の体は思うように動かない。
「っ…」
ぶつかると思い目を固く瞑ったがなかなか自分が予想していた痛みは来ない。そろりと目を開けると縁下くんがボールを手で弾いていた。
「あっぶな…佐藤さん大丈夫?」
「え、あ、うん…」
心配そうな顔で私を見る縁下くんを見てると先程までは何ともなかったのにやけに心臓が痛い。
「ごめんやっぱり大丈夫じゃないかも」
赤くなった顔を隠すように蹲ると頭上から縁下くんが困惑する声が聞こえてきた。…だってあんなのずるいじゃん。
「と、とりあえず保健室行こっか」
「あー…ごめん冗談だから!!!何ともないよピンピンしてる!あ、そろそろ練習戻らないとだよね!私も録画してたドラマ見たいから帰るね!またね!」
「え、ちょ佐藤さん!?」
出来るだけ縁下くんに顔を見られないようにしながら私は体育館を去った。…はぁ明日からどうしよう。
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作者名:彩乃 | 作成日時:2019年9月10日 20時