山口忠 ページ4
「月島くん、ちょっといい？」
可愛らしい声でツッキーを呼んだのは、1年生の中で可愛いと噂の佐藤Aさん。ツッキーと並ぶと絵になっていて目の保養になるが、それと同時に酷く羨ましく思う。
「何？」
「ちょっとこっちきて！」
「ここじゃ話せない事なの？」
「っっ！分かってる癖に…！」
少し頬を赤らめてツッキーを睨んでいる佐藤さんはとても可愛らしい。そんな佐藤さんを見ても全く動じないツッキーは流石の一言に尽きる。
「ご、ごめんね山口くん。少しだけ月島くん借りるね」
「俺の事は気にしなくていいよー」
本当にごめんと言って謝ってくる彼女も可愛い。…俺さっきから可愛いしか考えてないな。でも仕方ないよな。だって密かに好きな子の行動なんて何でも可愛く見えてしまうはずだ。
「はぁ〜よりにもよってツッキー好きな子かぁ」
チラリと遠くへ離れた2人を見ると、意地悪そうな顔で笑っているツッキーと先程よりも赤い佐藤さんが見える。…でもツッキー格好いいもんな、仕方ない。
「や、山口くん」
「っ！？ツッキーと話してたんじゃないの」
「えーっと、もう月島くんとの話は終わったから平気です…」
ん？じゃあ何でツッキーは戻ってこないんだ？教室を見渡してもツッキーの姿は見当たらない。トイレにでも行ったのかな？
「そっか」
「そ、そんな事よりも！山口くんに聞きたい事があって…！」
「へ？俺？」
首を勢いよく縦に振る佐藤さん。…何だろうツッキーの好みのタイプとかかな、流石に俺もそこまで詳しく知らないけどどうしよう。
「えーっと…ツッキーの好みとかなら俺詳しくないよ？」
「月島くんの好み？何で？」
「違うの？だっていつもツッキーと話してる時顔赤くしてたからそういう事なんだと思ってた…」
佐藤さんはその言葉を聞くと違うよ！と彼女にしては珍しく大きな声で否定してきた。その声の大きさに俺がビビってるとその勢いのまま彼女は口を開いた。
「私が月島くんに聞いてるのは山口くんとどうしたらもっと仲良くなれるかとかだよ！？月島くんの好みとか微塵も興味ないしむしろ山口くんの好みが知りたいよ！？」
「え、そ、それって…」
自分の頬が赤くなるのが分かる。自惚れてないはずだ。逆位に今の彼女の言葉とこの表情で勘違いしない方が難しい。
「こ、こんな所で言うのは恥ずかしいから───」
続きは後でちゃんと言わせてね？
照れながら耳元でそう言ってきた佐藤さんに俺の心臓は破裂しそうになった。
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作者名：彩乃 | 作成日時：2019年9月10日 20時
