あなたのいない、この世界で【煉獄杏寿郎】

伍 ページ8

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数年経ってもなお、鬼殺隊時の癖が染み付いているらしい槇寿郎さんは、鬼舞辻無惨の死からずっと、一人警備に当たっているのだが、そんな疲れている槇寿郎さんに悪いと思いながらも、私は岩をどかしてもらい、下を覗く。



すると、予想通りビニールに包まれた何かが潰されており、その袋を退かしてみれば、長年下敷きになっていた手紙が、過ぎ去った年月を表すように濃いシワを寄せた状態で出てきた。









私はその場で槇寿郎さんにお礼を言い、早く寝るよう注意されながら部屋へ戻ると、直ぐに机に向かって手紙を開けた。









◇◇









Aへ




今回は見つけるのが大変だっただろう。


実は、ある人物に協力してもらって、Aを楽しませてやろうと、意味がよく読んでいたあるふぁべっとという物を使って隠し場所を記した。


随分気取った隠し方になってしまったような気がするが、君と毎晩月を眺めるのは、俺にとって本当にかけがえのない時間だった。



そして、君が覚えているかは分からないが、この洋書は、君が女学校に入学する際に俺の家に忘れていったものだ。


ずっと返しそびれていたため、良い機会だと協力者の提案もあり、利用させてもらった。



落書のような真似をしてしまってすまない。







そんな話はさて置き、この本といい、昔から本を読むことが好きな君に、俺はずっと聞いてみたいことがあった。

直接聞くといつも教えてくれないから、この手紙に書かせてもらう。







君は小さい頃から読書が好きで、よく俺に外国の話をしてくれた。 一度、好奇心で覗いた君の本は、頭が痛くなるほど字で埋め尽くされていて、俺には全く理解できなかった。



そんな君に、なんのためにそこまで勉強をするのかと聞けば、君はなりたいものがあると答えた。



その夢の内容については、何故か頑なに話そうとしなかったが、君がその夢を俺と結婚したから諦めたというのなら、是非今からでも挑戦して欲しいと思っている。







君は頭も良くて、器量も良い。


必ず、叶えられるはずだ。






そして、君を幸せにすると誓っておいて、君ひとり置いていってしまったこと、本当に心憂く思う。



しかし、君は君の母上に似て、非常に強い人間だ。



君が天寿を全うし、こちらに来た時の土産話にでも聞かせておくれ。









◇◇

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