杏と桜 ページ30
◆
「初めて会うな。桜寿郎」
「…」
誰だ、なんて聞かなくても分かる。
祖父と叔父上にそっくりな派手な髪色は、母の大事にしていた写真と全く同じ。
しかし、俺と同年代くらいに見える父上の姿から、恐らくこれは夢なのだろうと悟った。
「…いや、墓参りに来てくれた時も合わせたら
初めてではないな!」
そう突如ハキハキと話し出す父上に、一人困惑していれば、父上はハハッと嬉しそうに笑う。
そして、会ったことがない上に、血の繋がりもない俺に向かって、父上は我が子を見るような優しい眼差しを向けた。
「Aはな、本当に泣き虫なんだ」
「…?
俺は母上が弱音を吐くところを
見たことがありません」
ましてや泣き顔なんて…と、俺が不思議に思って返せば、父上は楽しそうに笑い声をあげる。
「それはそうだろう!
彼女は人前、特に息子の前では
強い人間でありたいと考えるはずだ」
「…!」
そう確信しているように話す父上に驚いていると、この話を皮切りに、母上の性格や面白かった思い出の話を次々と挙げていく。
そんな母上と父上の話をぼんやり聞いていると、突然空気が大きく揺れ、意識が浅くなるのを感じる。
「…む。そろそろか
桜寿郎。俺は行かなければならないところがある
ここら辺で失礼するぞ」
もう夢から覚めてしまうのか。
まだ話を聞いていたい。
…この人を、父上と口に出して呼んでみたい。
「っぅあ、待って!!」
遠ざかっていく父上の姿に、切り替え早すぎるだろと文句を思いつつ、一気に増える脳内の願望と思考を吐き出すように、俺は咄嗟に口を開く。
「母上はずっとあなたを」
「っ父上を待っています!!!」
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雫 - 涙止まらん。最高です (8月18日 23時) (レス) @page6 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めてのコメント失礼します!メチャ号泣しました! ほんとに感動しました! (2022年3月29日 17時) (レス) @page33 id: 70da419123 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - つんつくさん» お返事遅くなってしまって申し訳ありません。暖かいコメントありがとうございます!手紙の内容については煉獄さんの性格などを色々悩んで書いたところなので、そう言っていただけるととても嬉しいです。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - みっちゃんさん» 2度も素敵なコメントありがとうございます!嬉しいコメントばかりで、物語を書くにあたって凄く励みになりました!お返事遅くなってしまって申し訳ありませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
つんつく(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この度は完結おめでとうございます。作品のファンになりずっと楽しみに読ませていただいてました。煉獄さんの手紙にはいつもいつも泣かされました素敵すぎです。美しくとっても素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月4日 15時) (レス) id: 60af00218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年11月21日 1時