かくれんぼ ページ23
◇
「A様!!桜寿郎様がおりません!!」
炭治郎くんと別れた後、屋敷の門を潜ろうとしたところで、顔を真っ青にした使用人の一人が私に駆け寄る。
「落ち着きなさい。外には出ていないから大丈夫よ」
まず屋敷の中を探しましょうと声をかけながら、焦りから呼吸の浅い岡に、しっかりなさいと背中を軽い力でポンと叩く。
「残りの二人を呼んで、三人で屋敷の中を探して頂戴」
千寿郎達には心配をかけぬよう、悟られないように探してと念を押す。
…さて、私はどこから探そうか。
そう考えながら門の鍵を閉め、私は桜寿郎の居そうな庭へ向かった。
◇
庭に出てみると、息子の晴れ姿により幸せ一杯な槇寿郎さんが、縁側で一人お酒を嗜んでいた。
「A。久しいな、息災か」
「はい、お陰様で」
仕事を初めて約二年、恐ろしい程の速さで過ぎていく月日に驚く暇もなく、私は仕事漬けの日々を送っている。
仕事の拠点が都心になるため、煉獄家を出るといった時は槇寿郎さんに猛反対されたが、一刻も早く国を変える力が欲しい私は、なんとも恩知らずなことをしてしまった。
「…桜寿郎は、寂しがっていないか?」
「もちろん寂しがっていますよ」
仕事の都合上、幼い頃から託児所へ預けていた桜寿郎は、今年で七つになり、学校に通わせるようになってすぐ、活気溢れる元気な子になった。
私の上京が決まってすぐ、槇寿郎さんや実家に預けるという話も浮上したが、そんな無責任なことをしたくないという自己満足のために、私は桜寿郎に寂しい思いをさせてしまっていた。
「…あ。ここで桜寿郎を見ませんでしたか?」
静かな雰囲気を拭い去るように、そう話題を変更させれば、槇寿郎さんは少し驚いたように、居ないのかと声を上げる。
「いえ。声がしないものですから」
たぶん昼寝でもしているのでしょうねと、適当な嘘をついた私は、槇寿郎さんの反応から庭に来ていないと悟り、すぐにその場から離れる。
そして、もし隠れるとしたらあそこだろうと、遠い昔の思い出の場所へ、私はゆっくり歩を進めた。
◇
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雫 - 涙止まらん。最高です (8月18日 23時) (レス) @page6 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めてのコメント失礼します!メチャ号泣しました! ほんとに感動しました! (2022年3月29日 17時) (レス) @page33 id: 70da419123 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - つんつくさん» お返事遅くなってしまって申し訳ありません。暖かいコメントありがとうございます!手紙の内容については煉獄さんの性格などを色々悩んで書いたところなので、そう言っていただけるととても嬉しいです。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - みっちゃんさん» 2度も素敵なコメントありがとうございます!嬉しいコメントばかりで、物語を書くにあたって凄く励みになりました!お返事遅くなってしまって申し訳ありませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
つんつく(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この度は完結おめでとうございます。作品のファンになりずっと楽しみに読ませていただいてました。煉獄さんの手紙にはいつもいつも泣かされました素敵すぎです。美しくとっても素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月4日 15時) (レス) id: 60af00218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年11月21日 1時