命名 ページ1
◇◇
赤ん坊を持ち帰ったあの日。
もちろん、槇寿郎さんと千寿郎は驚いた顔をしていたが、私がこの子を育てると言い切ると、全く否定しようとしなかった。
「桜寿郎。ほら、上を見てご覧なさい」
「さくら!!」
この桜の木の下で、この子を拾って約2年。
家に帰ってすぐ、赤ん坊が男であることが発覚し、どうしても「桜」の字を入れたかった私は、槇寿郎さんに許可を貰い、煉獄家に代々使われる「寿郎」という字を組み合わせ、赤ん坊に「桜寿郎」と名付けた。
子育ては大変なことばかりであったが、二つにもなると自分のことは大概一人でするようになる。
しかし、それも楽になるかと思えば、今度は自我が芽生え始め、目を離すことが難しくなってしまったのだが。
いくつになっても子を育てる母親というのは、苦労するのだなと、痛いほどお母様の気持ちが分かった。
「あれ!Aちゃんだぁ!」
いつも街から少し離れた通りを散歩していると、突然、後方から名前を呼ばれる。
「…!須磨さん、お久しぶりですね」
「うん!本当に久しぶり〜!
こんなところで会うなん…え゛!?」
私から少し下に視線をそらした須磨さんは、私の後ろに隠れる桜寿郎を見て、驚いたように大声を上げる。
そんな声に桜寿郎は肩を跳ねさせ、私の服を握りしめる。そんな様子を見て、須磨さんは申し訳なさそうに、うるさくてごめんねと私たちに謝った。
「おーい、須磨どこだー」
「もうっ!
なんで一人ですぐどっか行っちゃうのあの子!」
「まぁまぁ、落ち着いてまきを」
そんな会話が聞こえると、角から曲がってきた3人組
「あら、やはり皆さんも御一緒でしたのね」
相変わらず仲が良いなと、ふっと笑って挨拶すると、そんは私を見て、3人はそれぞれ驚きの声を上げた。
◇◇
「…私達も、随分歳をとりましたね」
縁側に座る私は、遠くで桜寿郎と戯れる雛鶴さん達を見ながら、隣に腰掛ける宇髄さんに笑いかける。
あの後、もし用事がないなら遊びに来いと言ってくれた宇髄さんのお言葉に甘え、私は久しぶりに宇髄さんの御屋敷に訪れていた。
◇
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雫 - 涙止まらん。最高です (8月18日 23時) (レス) @page6 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めてのコメント失礼します!メチャ号泣しました! ほんとに感動しました! (2022年3月29日 17時) (レス) @page33 id: 70da419123 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - つんつくさん» お返事遅くなってしまって申し訳ありません。暖かいコメントありがとうございます!手紙の内容については煉獄さんの性格などを色々悩んで書いたところなので、そう言っていただけるととても嬉しいです。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - みっちゃんさん» 2度も素敵なコメントありがとうございます!嬉しいコメントばかりで、物語を書くにあたって凄く励みになりました!お返事遅くなってしまって申し訳ありませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
つんつく(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この度は完結おめでとうございます。作品のファンになりずっと楽しみに読ませていただいてました。煉獄さんの手紙にはいつもいつも泣かされました素敵すぎです。美しくとっても素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月4日 15時) (レス) id: 60af00218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年11月21日 1時