優しさ ページ11
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「…悪かったなァ」
「いえ。それより具合の方はいかがですか?」
申し訳なさそうに謝罪する不死川さんに笑いかけながら、数時間寝ていたことを伝えると、不死川さんは驚いたように起き上がって外を見る。
「もう外も暗いし、
そろそろ私達も帰ろうと思うのですけれど」
日が沈んで暗くなった外を見ながら、失礼な質問かもしれないけれど御家族の方は…と、不死川さんを一人家に残してしまうのが心配で聞いてしまう。
「そんなもん、いるわけねぇ」
そう当たり前のように言う不死川さんに、私は思わず笑顔が固まってしまい、胸がギシリと痛くなる。
不死川さんが鬼殺隊に入った理由も、どんな訳で家族を作りたがらなかったのかも知らないけど、この人の言葉の裏側にはいつも優しさがある。
「…」
このまま不死川さんだけを置いて帰る訳にはいかないと思い、不死川さんにとって気の置ける方が居ないかと、私が考えながら目線を床に落としていれば、不死川さんがオイと話しかけてくる。
「鬼が居なくなったって言っても夜は危ねぇ
泊まっていけ」
「…しかし、
それでは不死川様の気が休まらないのでは」
ただでさえ昼間倒れているというのに、私など居たら余計気疲れしてしまうと心配して返す。
すると、不死川さんはそんな私を見て、チビも居んだろと、隣で正座する桜寿郎を見て少し口元を緩める。
「では、お言葉に甘えて」
◇
そして、夜。
三人で夕食を済ませると、早々に船を漕ぎ始めようとする桜寿郎ために、不死川さんは先にお風呂を譲ってくれる。
「お風呂頂きました」
先にお借りしてしまってすみませんと、桜寿郎の頭を拭きながら話せば、不死川さんは適当に返事して歩き出す。
「…」
そんな不死川さんの後を静かに追いかけ、私は気づかれぬよう細心の注意を払う。
こんな場所まで着いていくなんて失礼だと思いながらも、風呂場で倒れてしまっては…と心配で、自分に言い訳をしながら歩いていると、角を曲がった所で不死川さんの胸に衝突する。
驚いて目をみ開いていると、恐ろしい程笑みを浮かべる不死川さんが、額に青筋を浮かべた。
◇
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雫 - 涙止まらん。最高です (8月18日 23時) (レス) @page6 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めてのコメント失礼します!メチャ号泣しました! ほんとに感動しました! (2022年3月29日 17時) (レス) @page33 id: 70da419123 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - つんつくさん» お返事遅くなってしまって申し訳ありません。暖かいコメントありがとうございます!手紙の内容については煉獄さんの性格などを色々悩んで書いたところなので、そう言っていただけるととても嬉しいです。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - みっちゃんさん» 2度も素敵なコメントありがとうございます!嬉しいコメントばかりで、物語を書くにあたって凄く励みになりました!お返事遅くなってしまって申し訳ありませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
つんつく(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この度は完結おめでとうございます。作品のファンになりずっと楽しみに読ませていただいてました。煉獄さんの手紙にはいつもいつも泣かされました素敵すぎです。美しくとっても素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月4日 15時) (レス) id: 60af00218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年11月21日 1時