長期合宿 ページ47
◆
「今年はAと水風船やる！」
「え、Aちゃんもいんなら俺も誘えよ」
夏休み前、どこか浮かれた様子の二年生たちを横目に、俺は白福さんからボトルを受け取って水分を摂る。
「喜びそうだねA、そういうの絶対好きでしょ」
「私もAがいるならやりた〜い」
何度も出てくるAという人が気になり、俺は先輩たちが話す輪に近づいみる。
「Aさんって、他校のマネージャーの方ですか？」
随分親しい感じですけどと、何気なく聞いてみれば、木葉さんが興奮したように距離を詰めてきた。
「っもう、すっげー可愛いのよ！！」
いや可愛いっつーか、綺麗っつーか、とにかく守ってあげたくなる…！と言う木葉さんに、なぜか小見さんも力強く賛同する。
「…そんな美人な方が合宿に来るんですか？」
さほど興味のない話題だったため、凄いですねと適当な感想を先輩方に話していると、木兎さんが何か思い出したようにいきなり笑いだした。
「そういえばAってさー、去年便所で寝落ちして
行方不明だって大捜索されてたよな！！」
「「え、」」
その人、色々大丈夫なのか？と俺が考えていると、この事実を知らなかったらしい木葉さん達が、絶対ありえないというように否定する。
「ちょっと木兎、それAに口止めされたでしょ」
コンビニでアイス買ってもらってたじゃん…と呆れたように言う雀田さんに、木兎さんはそだっけ？とケロッとしながら答える。
この人も色々大丈夫か…？
「まぁもしもそれが本当だとしても！！！
それを覆すくらい可愛いからいーの！！」
「何をそんなに必死に…」
俺は若干引きながらそう言うと、白福さんが確かにAはすごい美人さんだよね〜と緩く同意する。
「てか、インターハイで見なかったのかよ？」
「…すみません、
集中していたのでそういうのはちょっと…」
「おいその言い方だと
なんか俺が集中してねぇみたいじゃん！！」
先輩正セッターがいるため試合には出られなかったが、梟谷に入って初めてユニフォームを貰った試合のため、あの時は相当緊張していたのだ。
そういえば、あの人はどこの高校の生徒なのか。
それこそ気持ち的にインターハイの会場で探す余裕はなかったが、ちょうど一年前、春高予選の会場であった高校生。
美人と言えばあの人も相当綺麗な人だろう。
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年8月5日 21時
