長期合宿 ページ44
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「え、菜の花のカラシ和え？」
何となく昼間の赤葦を思い出して、静かな空気に耐えられなくなった私は、好きな食べ物？なんていうベタな話題を出すと、あまりにも聞きなれない単語が返ってくる。
「…渋くない？」
「そうですか？」
別に人が好きなものにケチつけるわけじゃないけど…と、私が壁によりかかりながら話していると、赤葦も釣られるように近づいてきて隣に寄りかかる。
話しているうちに、気まずさなんて物はいつの間にかなくなり、私たちはバレーの話題で盛り上がった。
「今日は木兎さんでも不調になることがあるのだと
良い勉強になりました」
「感想が大人。」
今日の試合について自ら話を振ってくる赤葦に、昼間の不調はもう自分の中で決着が着いたのではないかと仮定して、私はそういえばさ！と今までの話題を切るように口を開く。
「赤葦って、木兎にトスあげるの凄い好きでしょ」
「え、」
自主練の時も試合中の時も、いっつも目がキラキラしてるからすぐ分かるよと笑っていうと、ぐぬ…と悔しそうな顔をしたまま押し黙る。
「木兎のプレーって見てるだけで体が熱くなるよね
なんていうか、凄くスター性を感じる。」
「……分かります。」
認めたくないとでも言いたげな表情で遅れて同意する赤葦に、私がふっと笑いを零ぜは、赤葦は物珍しそうに私の顔を顔をじっと見つめてきた。
「…赤葦さ、」
その黒い瞳を下から覗き込んでいるうちに、私は合宿中、ずっと考えていたことを口走る。
「…木兎の面倒見るの大変だと思うけど
赤葦なら絶対に大丈夫だよ」
そんな私の言葉を聞いて驚いたように私を見る赤葦に、あまりにも無責任すぎる言葉を言ってしまったかなと、焦って口を塞ぐように手を当てる。
まだ赤葦が吹っ切れたという仮定であるこのタイミングで言ってしまったことに気が付き、私はどっと後悔の念が押し寄せてきて、チラチラと赤葦の様子を伺った。
赤葦なら木兎を支えることができると思ったのは事実だが、今ここで言うのはまずいだろ…と赤葦の顔を見れないでいると、しばらくの間また沈黙が続いた。
「…」
もう今更何を言っても時間は戻せないし、もう何もしなくていいかと私は挽回を諦め、時間に任せようと天を仰いだ。
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年8月5日 21時
