長期合宿 ページ34
◆
合宿2日目、朝。
「夜久、昨日黒尾となんかあった？」
朝起きてすぐ、寝ぼけた頭で一人水道の前にたっていると、隣に来た海が歯磨き粉を歯ブラシにつけながら聞いてくる。
「やっぱ変だよなーアイツ。」
昨晩、遅い時間に自主練から帰ってきた黒尾に、Aとまた練習してきたのかーなんていつも通り聞いたのだが、なぜか不自然に話を逸らされた。
「ねぇクロ、Aは？」
「あ？もう食堂にでもいるんじゃねーか？」
一年の孤爪は黒尾と幼馴染らしく、部の中ではAか黒尾くらいしか話しているのを見たことがない。
そんな孤爪と黒尾がいつも通り話すのを見て、全くもって黒尾に避けられる理由に心当たりのない俺は、気持ち悪いが本人が言ってくるまで待ってやることにした。
「あ、海。俺のにも歯磨き粉つけて」
「いいけど、また忘れてきたのか？」
寝起きにも関わらず仏のような笑みを浮かべる海に、部屋に忘れてきたと説明していると、いきなりダッと廊下を走る音が聞こえて、山本が勢いよく俺たちの前に姿を現す。
「海さん！！
Aさん、食堂にもいません！！！」
いつもこの時間にはわーぎゃー騒いで廊下にいるはずのAが、この時間になってもまだ姿を見せていない。
どこほつき歩いているのかと、Aを心配に思って山本と福永に探しに行ってもらったが、二人は慌てたように騒ぎ出す。
時間さえあれば絶対食堂にいるのに…と珍しく顔色を変える孤爪も心配するように話す。
「俺、女マネの部屋も行ったんすけど」
「…おぉ、良く行けたな」
色んな意味で山本が女子部屋に行けたことに感心していると、他のマネさん達も部屋に居ないっぽいし、誘拐では…？なんて大それた話に発展していく山本たちを見て、まるで去年の自分たちを見ているような気持ちになる。
まぁ今年もどうせあそこだろとキョロッと黒尾に目配せすれば、あいつもなんてことないように落ち着いていて、焦る一年たちに大丈夫だと安心させるように話した。
「今年は初っ端からだな」
「「？？」」
俺がそう言って笑うと、海も困ったように笑いを零し、山本たちはなぜか笑う俺たちを見て首を傾げた。
◇
inトイレ
「Aー？起きて！！」
「起きないとまた監督たちに怒られるよ！！」
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年8月5日 21時
