短期合宿 ページ15
◇
生川との試合後、森然、梟谷と何周も何周もグルグル試合をして数時間。
現在は午後5時半だ。
ラストの梟谷戦で負けた私たちは、ペナルティのフライングをした後、体育館の片付けに加わり、各々の荷物を持って解散することになる。
「A〜、また2週間後ね〜」
「うん、雪絵もお元気でね！！」
梟谷の広い駐車場でバスを待っている最中、見送りに来てくれた雪絵達に別れの挨拶する。
「あんた、夏でもちゃんと布団かけて寝なさいよ？」
いっつもお腹出して寝るんだから！！と心配して言うかおりに、私はお母さんかと思わずつっこむ。
「Aー！次はUNO持ってくるね！！」
「うちら去年の合宿でトランプ禁止になったじゃん」
お馬鹿なのかな？？と英里の2つ結びを顎の下でキュッとクロスして、ググッと顔を締めつける。
禁止された経緯は説明すれば長くなるけど、簡単に言えば私と英里が夜更かししたからです。
「ふふっ、Aさん
次はバスロマン持ってきちゃダメですよ」
「うん、あれは本当にごめんね」
私が英里から手を離すと、楽しそうに笑う真子ちゃんが思い出したようにそう話しかけてくる。
いやほんの出来心で…と、興味本位で合宿所の湯船にバスロマンを入れようとした寸前、みんなに全力で止められたことを思い出して素直に謝罪する。
その後もしばらく五人で話しているうちに、部長に名前を呼ばれ、私は2週間後にまた会うからとみんなに軽く別れを告げた。
◇
早速バスに乗り込んだ私は、車内を見渡して空いている席を探す。
「あれ、夜久ぼっちだ！」
珍し〜ハブかれた？なんて笑いながら、ドスンと夜久の隣の席に腰を下ろすと、なんでわざわざ隣に座るんだよとムスッとした声が返ってくる。
「え、まだ怒ってるの？」
午後に少し喧嘩になったことを根に持っているのかは分からないが、あんなんいつものことじゃん？とヘラヘラ笑っても、全く夜久はこっちを見ようとしない。
「…」
えー…
試合中にこそ喧嘩したことはなかったが、夜久と言い合いになるのなんて日常茶飯事。
何が嫌だったのか全く分からない私は、あの…仲直りしませんか…？と、機嫌を伺うように夜久に話しかける。
窓枠に肘をついて外を眺め続ける夜久は、聞こえるか分からないくらいの小さな声で、…身長低くて悪かったなと呟いた。
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年8月5日 21時
