海水に溺れて【YouTuber中短編集】 (ページ30)

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そらちぃ【とっち様リクエスト】ページ30

「〜〜♪」

鼻歌を歌いながらある場所へ向かう。階段を一番飛ばしなんかしちゃって、鉄製の階段を音を立てて上った。

「おっ、風がきもち〜」

屋上。
ありがたいことに、うちの高校の屋上は鍵がついていなかった。今は苦手な科目が授業だから、サボり。ありがとう先生。

「あれっ、ここで何してんの〜？」
『…』

屋上の端の方に、女の子の姿が見えた。なるべく大きい声で呼びかけたけど、返事はなかった。

「君だよ、君っ」
『わぁっ！？』
「ええ？」
『ご、ごめんなさいっ』
「えっ、ちょ！」

俺が話しかけに行くと、その子は蒼白した顔で一目散に逃げていった。

「なんだ、あの子…」

変な子だなあって思いながら、屋上のちょうど中心に寝っ転がった。

。

そよかぜが気持ちよくて寝てたみたいで、スマホで時間を確認すると、もうお昼になっていた。つまり、３時間目からサボっていたから、３時間目と４時間目両方サボったことになる。

「やべっ」
「おいばか、なにやってんの」
「うわぁ！？」
「うるせっ」

先生が来たと思ってびっくりしたけど、そこに立っていたのは冷めた目で俺を見るえいちゃんだった。

「先生、気付いてた…？」
「数学の先生は気付いてたけど、怒ってはなかった。古文の先生はボケてた」
「ボケ…？」

言ってる意味は分からなかったけど、バレていないことに安堵する俺。よかった。

「お前こんなところ…ひとりで何やってんだよ」
「寝てた」
「呑気だな」

はい、と俺の弁当を渡してくれるえいちゃん。わざわざ持ってきてくれたらしい。

「えいちゃんさー」
「ん？」
「同じ学年の人全員把握してる？」
「んー…少しだけ」
「じゃあさ、前髪長くて、黒髪ロングの女の子知ってる？あと結構地味め」
「急になんだよ」

俺はえいちゃんにさっきの女の子のことを話した。なんとなく気がかりだったあの女の子。一体何組の子なんだろう。

「本当に同じ学年？」
「うん。上履きの色青だったし」
「ふーん…黒髪ロングはいっぱいいるからね」
「まあ」

えいちゃんは数分くらい唸った後、なにか思いついたように「あっ」と声をあげた。

「いた。ひとり」
「え、まじ？」
「ツリメとりっくんと同じクラスの人。多分だけどね」
「そうなんだ…どんな子？あのー、容姿とかじゃなくて」

えいちゃんはサンドイッチを口にくわえながら首を振った。

「そっか…」
「ツリメとりっくん呼んでみる？」

そう言うとえいちゃんはスマホを取り出した。