海水に溺れて【YouTuber中短編集】 (ページ21)

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モトキ【はるの様リクエスト】ページ21

俺には彼女がいる。リスナーさんだったらしく、いつも動画を見てくれていたらしい。
でも、YouTuberらしく街中で声をかけられてから恋愛に発展したわけじゃない。ごくごく普通の、いや、簡単に言えば、俺の一目惚れだった。

ありがたい事に、俺たちFischer'sのチャンネル登録者は３８０万人を突破。セカンダリも１６０万人を超えた。たくさんのイベントなどで忙しくなった今、お見舞いに行くことも苦しくなってきた。

「A〜」
『はぁい。あ、モトキか』
「髪切った？」

結構長かったAの髪の毛は、もう肩までしかなくなっていた。でも、どんな髪型をしてても髪の毛はすごく綺麗だった。

『切った切った。こんな短くしたの久しぶりだよ』
「似合ってるよ」
『あたりまえ』

今日は元気そうだな、と思いながら、病室のベッドに戻っていくAのあとを追った。

『忙しいのにごめんね』
「それならいつも来てくれてありがとうって言ってほしい(笑)」
『失敬失敬。いつも来てくれてありがとう(笑)』

ベッドの近くの机には、俺たちの動画が一時停止されているスマホがあった。

「今日の調子は？」
『絶好調〜モトキが来たから余計絶好調〜』
「よかった(笑)」

近くの椅子に座り、お見舞いに来たとき恒例の長時間お話タイムスタート。いつだったか、面会時間ギリギリまで話していたことがあった。でも、不思議と話が途絶えたりはしなかった。

「今度ね、ユーフェスあるんだよ」
『そうだよね！見に行きたい〜！ライブ配信だけじゃ物足りないよ』

入院する前はよくYouTuberのイベントに言っていたらしい。入院したあとはなかなか行けず、いつもTwitterやYouTubeで配信されるライブを見ているという。

「元気ならおいでよ。ステージの上から見つけだす(笑)」
『あたぼーよ』

そう言ってまた笑った。