海水に溺れて《3rd》【YouTuber中短編集】

虫眼鏡【zawa-mina様リクエスト】 ページ29

『ざーわくんっ』
「先生、ね。なに？」

理科教科室にいる、小さくて眼鏡の先生、"ざわくん"。ざわくんというのはみんなからの愛称だ。

『テスト範囲教えて！』
「だめ」
『えーっ』
「えーっじゃないよ、自力でやりなさい」
『ざわくんケチ』

ケチでよろしい、とざわくんはまた紙に目を移した。かっこいいざわくんとか、イケメンざわくんとか言ってみたけど、適当にあしらってスルーされた。

『いいもん。りょう先生に教えてもらう』
「りょうくんだって教えてくれないよ。やめておきな」
『そこは色仕掛けで…』
「色気すらない(人1)が？」
『ざわくん豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ』

地味な死に方だね、とざわくんは笑った。
そこに、長身の先生登場。

「虫さーん、って、(人1)何してるの」
『りょう先生！テスト範囲教えてくださーい』
「あれ？色仕掛けは？」
「色仕掛け？(笑)それより虫さん、これ、テスト範囲入力のUSB貰ってきたよ」

テスト範囲！？これはチャンスだっ！
そう思ってりょう先生の手にある小さくて黒色の四角いものを取ろうと手を伸ばす。が、りょう先生の身長には届かず、そのままざわくんの手に渡ってしまった。

「で、(人1)はここで何してんの？」
『お話でs「テスト範囲聞きに来ただけでしょ」ざわくん！』
「なるほどねぇ。(笑)お前やればできるんだから、ちゃんと勉強すればいいのに」
「やる気ないんだよね〜」
『お母さんか』

身長の低いざわくんと、身長の高いりょう先生はまるで長年の夫婦のよう。

『イタリア先生には鞠絵(まりえ)ちゃんがお似合いですよ』
「誰がイタリア先生だ」

鞠絵ちゃんとは、保健室の先生だ。出てるところは出てて、締まってるところは締まってるナイスバディだと評判。年齢は内緒らしい。

「鞠絵先生って結婚してるよね」
『えっそうなんですか』
「左手薬指よく見てごらん」
『もしかしてりょう先生…』
「俺じゃねえわ」

手に持っていたバインダー(の角)が頭に直撃。地味に痛い。

『まあ私天才なんで期待しててくださいよ』
「天に災いを齎(もたら)す方でしょ(笑)」

天災ってか。誰がうまい事言えと。

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