海水に溺れて《4th》【YouTuber中短編集】

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Aはメンバーではないため、常日頃から会えるわけではない。Aは銀行員で、お互い多忙な時は1週間会えないこともある。

A最近会えんなー、りょうくん
りょう土曜日暇なら、デートしよっか
A午前中ちょこっと仕事あるから午後から!
りょう了解。○時でいい?
Aらじゃぁぁー!

「めっちゃニヤニヤしてるー(笑)」
「うわ、千葉いつからいたの」
「割と最初から」
「ともやんもー？(笑)」

今日は夕闇とコラボ動画。Aは夕闇が好きらしいので、今日の動画は喜んで貰えるような気がする。(ちなみに、東海オンエアの次にと言っていた)

「例の彼女さん？」
「例のってなんだよ、例のって」
「写真みたいー」
「えー」
「俺もー」

千葉とともやんふたりして肩にのしかかって来るもんだから、体中が激痛に襲われている。体硬いのかな。

「痛い痛い痛い！いたたたっ」
「千葉、りょうくんのスマホ奪い取れ！」
「らじゃー」
「ちょ、こら！そろそろ筋がっ」

結果、俺がふたりを正座させて説教じみたことをしつつ見せることに。

「……おお」
「なに？(笑)」
「かわいいね〜」
「自慢だから」
「俺昨日会った」
「「え？」」

ともやんの一言に千葉と顔を見合わせた。ともやんは会ったとは言わないか、と平然とした顔で続けた。

「銀行員？」
「そうだけど…」
「俺が言っていいのかあれだけど…告げ口していい？」

俺と千葉にだけ聞こえるように、声を小さくさせて言った。

「俺、銀行に用あったから近くの銀行行ったんだけど、帰る時間が俺とちょうど被ってたまたまその人を見かけてさ。帽子かぶってて顔は見えなかったけど、この人と歩いてたのは確かに男だった。なんか楽しそうに歩いてたよ」

それに対し、すかさず千葉が身を乗り出した。

「え、それマジ？」
「なんで俺がりょうくんに対してこんな変な嘘つかないといけないんだよ」

ともやんは眉根をぐっと寄せて、千葉のおでこにデコピンをした。

「そ、れ、見間違いってことは、」
「……ごめん、撮影前にこんな話して。やっぱり俺の見間違えだったかもしれないから気にしないで」

そう言うと、ともやんは向こうにいるてつやな小柳の元へ早歩きしていった。

「…撮影しよう？」

千葉なりの優しさなのか、ただその場の雰囲気にのまれてなのか、俺を撮影に促した。

「…うん」

ともやんは気にするなと言っていたけど、俺にはずっと気がかりで仕方なかった。

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