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駅まで送るよ、と言われ、並んで歩く。
「俺明日帰るけど、すぐ来るから」
「うん、待ってる」
悪いことをしている自覚はあったけど、バレたらバレたでこっちにも言い分はある。
駅に着いたあと、じゃあね、と言いながら手にそっと触れて別れた。
家に帰ると、大貴はソファーに座ってテレビを見ていた。
なんとなく気まずくて、ただいまを言わずに寝室に入る。
大貴もちらっとこっちを見たけど、何も言わずにテレビに戻った。
ベッドに座ってLINEを開くと、伊野ちゃんからLINEが来ていた。
伊野ちゃんちゃんと帰れた?
Aうん、ありがとう
伊野ちゃん来週また来る
A分かった
そうだ、夜ご飯どうしよう。
今日は大貴も作ってないみたいだし...。
ゆっくり部屋を出ると、大貴はさっきと同じ体勢でずっとテレビ。
何見てんだろ。...なんだ、映画か。
頭の中で独り言を言いながら冷蔵庫を開ける。
あれ、お皿だ。作ってたのか...。
まったく、言ってよね、と思いながら、お皿を取り出す。
「...オムシチューって」
あなたの料理のレパートリーはオムライスとシチューだけなのか。
「...それ、おいしいから食べて」
大貴がこちらを振り返らずに言った。
「...ありがと」
私はオムシチューを持ってテーブルについた。
すると、大貴もテレビを消してこっちに来る。
「...A、他の人の匂いする」
「はぁ?」
「いつものAの匂いじゃないよ」
「何気持ち悪いこと言ってんの」
いや、別に...と大貴は頭の後ろをかいた。
そのまま会話が途切れる。
あー、なんでこんな冷たい態度とっちゃうんだろうな...。
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作者名:志乃 | 作成日時:2021年8月15日 15時