Tasty U【×arin】 (ページ2)

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ある日、仕事で帰りが遅くなった日のこと。

「嘘、雨！？」

オフィスビルを出ると、ザーザーと雨が降っていた。

天気予報では晴れって言ってたのに～！と、仕事用の鞄を頭の上に乗せて駅まで走る。

いつも家までは徒歩だから、止むまで待つか...。

「あれ、A？」

服についた水滴を払っていると、頭上から声がした。

顔を上げると...。

「えっ伊野ちゃん！？」

「久しぶりだね」

くふふっといたずらっぽく笑う彼は、伊野尾慧。通称伊野ちゃん。

中学から高校まで、私と大貴と伊野ちゃんでよく遊んでいた。

そして...伊野ちゃんは、私の元彼だ。

「なんでこんなとこに？」

「出張。営業マンだからさ」

確かに、伊野ちゃんはかっちりとしたスーツを着て、黒いカバンを持っていた。

いかにもサラリーマンという感じ。

「Aは？」

「仕事場が近くなの。帰ろうと思ったんだけど雨で」

「傘ないなら送って行こうか」

伊野ちゃんは黒い傘をほら、と軽く掲げた。

「じゃあ...お言葉に甘えて」

相合傘みたいになっちゃうけど、この状況だし早く帰りたいし、仕方ないよね。