神様は綺麗な花を摘む。2 (ページ44)

今日:14 hit、昨日:0 hit、合計:36,123 hit

93 ページ44

in side

今日の朝はすごく早く目が覚めた。

Aがいない。

あの後もう一度起きたから、Aがいないことは認識していたはずなのに、抱きしめられながら寝た時の温もりが蘇ってくる。

その温もりごと抱きしめるように、ぎゅっと体を丸めた。

Aに会いたい...。

看「伊野尾さーん、おはようございます」

病室の扉が開いて、看護師さんが入ってきた。

体を丸めてる俺に慌てて駆け寄る。

看「どうしました？苦しいですか？」

伊「大丈夫...です...っ寂しくて...っ」

俺が言うと、横にしゃがんで手を握ってくれた。

看「大丈夫ですよ。奥さん、もうすぐ来ますからね」

俺は涙を堪えながら頷いた。

看「じゃあお熱測りますね」

熱を測っている間も、頭はAのことでいっぱいで。

本当に今日帰れるんだ。

Aと一緒に寝られるんだ...。

看「平熱ですね。朝ご飯食べちゃいましょうか」

「今日...久しぶりに...お腹すいてるんです...っ」

看「本当ですか、じゃあ沢山食べないとですねっ！」

朝ご飯を準備しながら看護師さんが笑う。

今日はおかゆと野菜スープとゼリー。

白米が恋しいなあ...もう食べられないのかなあ。

俺は自分でスプーンを持てないから、看護師さんに食べさせてもらう。

看「おいしいですか？」

伊「おいしいです...次...あー...」

看「ペース早いですよ、もう少しゆっくり食べましょ」

伊「早く...食べちゃいたいんです...っ」

気持ちは分かりますけど...と看護師さんに呆れられてしまった。

食べさせてくれないなら、と手を伸ばしてみるけど、やっぱり手に力は入らなくて。

俺のそんな様子を見て、看護師さんも諦めた。

看「分かりましたから。じっとしててください」

相変わらず呆れられながらも、口に入れては飲み込み、口に入れては飲み込みを繰り返して、あっという間に朝ご飯はなくなった。

看「全部食べられましたね」

伊「あの...車椅子...」

看「へ？」

伊「早く乗せて...っ」

看護師さんが時計を見た。

7時半。

看「奥さん来るまであと30分もありますけど...」

伊「乗せてください...お願いします...」

そんな俺を見て、看護師さんはまた呆れ顔でため息をついた。