神様は綺麗な花を摘む。2 (ページ35)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:36,118 hit

84 ページ35

しばらくして、うがいをしてから看護師さんが新しい酸素マスクをつける。

うがいは苦戦したけど、咳き込みながらも何とか頑張って。

慧の背中を強めにさすってあげると、次第に落ち着いてきた。

酸素マスクは明日までつけててくださいって。

伊「はあ...はあ...すみませ...っ」

「大丈夫？今日はもう寝る？」

伊「いい...大丈夫...っすぅ...もうちょっとしたら...電話かけて...っ」

顔は真っ青だし、目は虚ろ。

絶対辛いだろうに...それだけJUMPと話したいんだろうな...。

看護師さんが出ていくと、慧が私の服の袖をちょんちょんと引っ張った。

「ん？」

伊「電話...かけて...」

「え、でも」

まだ治まって少ししか経ってない。

無理に喋ってまた苦しくなったりしたら...。

伊「お願い...っ時間...ない...」

はっとした。

慧の幸せは私の幸せなのに。

縛り付けてしまったらだめじゃないか。

私はリクライニングを上げて、中島くんに電話をかけた。

1コールで「もしもし！？」と声。

向こうのテーブルの上には大量のお寿司のお皿が置いてある。

空のお皿は1枚もない。

伊「え...食べてないの...？」

山「みんな伊野尾ちゃんが心配でお箸進まなくて」

有「すごい苦しそうだったから死んじゃうかと思ったよ...！」

知「そんなこと言わないでよ、大貴」

みんな深刻な雰囲気になってしまっていて。

そんなやり取りを見て、慧がんふふ、と笑う。

伊「俺...そんな簡単に死なないし...っ」

慧の言葉で、向こうの空気が和らいだ。

髙木くんがマグロを口に入れて「うまー！」と叫ぶ。

続いて有岡くんもサーモンを食べて「やべえ美味いぞこれ！」と言った。

みんな次々にテーブルに並んだお寿司を平らげていく。

慧はにこにことその様子を見ていた。