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僕は涼介から全部を聞いた。
「大貴...辛いね。よく頑張ってるよ」
優しく抱きしめると、大貴の体は小刻みに震えていて。
『だあちゃ!』
『杏優ちゃん、今はちょっと静かにね』
ベッドにのぼろうとする杏優を涼介がおろす。
『ごめ...おれ...っみんなに...迷惑かけて...っ』
「迷惑じゃない。大貴は悪くない」
『でも...っおれ...っ』
「ゆっくりでいいんだよ」
背中をさすると、大貴はゆっくりと深呼吸をした。
僕の体を剥がして、僕と涼介を交互に見る。
『俺、どうしても...言いたいことがあって』
『何?』
涼介が杏優を抱っこしながら聞くと、大貴は唾を飲み込んだ。
『コンサート、出させてください』
深々と頭を下げる。
『お願いします...っ』
『大ちゃん、いくらなんでもその体じゃ、』
『お願い...っ』
顔を上げた大貴は泣いていた。
『楓と引き換えでいいから...っ俺から、ファンを、コンサートを...奪わないでください...っ』
僕も涼介も言葉に詰まった。
僕達も気持ちは痛いほど分かるから。
ある日突然、大事なファンとコンサートを奪われたら、僕だって嫌だ。
しばらくの沈黙の後、涼介が口を開いた。
『楓くんと引き換えはだめだよ』
『...っ』
『無理しない程度になら、コンサート出てもいいと俺は思う。...でも、楓くんを可愛がれるようにする練習も、一緒にしなきゃだめ。
今の大ちゃんにとって厳しいことを言ってるのは分かってる。でもね?楓くんのお母さんは大ちゃんしかいないんだよ。引き換えなんて許さないよ』
終始優しい声で、優しい笑顔で。
『俺信じてるよ。大ちゃんの、『お母さんになりたい』って言葉。俺らも手伝うから、頑張ろうよ』
ね、と涼介が言うと、大ちゃんは泣きながら頷いた。
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志乃(プロフ) - 風鈴さん» ありがとうございます!嬉しいです泣 (2021年5月13日 21時) (レス) id: e83845d39d (このIDを非表示/違反報告)
風鈴(プロフ) - お話大好きです!いつも楽しく読ませてもらってます! (2021年5月13日 21時) (レス) id: b6f03e15c5 (このIDを非表示/違反報告)
志乃(プロフ) - (名前)はるひさん» ご期待に添えるかどうか分かりませんができるだけ書かせていただきますね! (2021年5月13日 16時) (レス) id: e83845d39d (このIDを非表示/違反報告)
(名前)はるひ(プロフ) - ymがつわりがひどいけど春樹くんのお世話があって大変、、、みたいなお話が読みたいです。 (2021年5月11日 1時) (レス) id: 6ee9d7971e (このIDを非表示/違反報告)
志乃(プロフ) - ホワイトタイガーさん» ありがとうございます!書きます! (2021年4月20日 16時) (レス) id: e83845d39d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志乃 | 作成日時:2021年3月21日 11時