78話 ページ32
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【赤司side】
昨日の最終調整も終え、大会当日の朝。
Aはユニフォームとにらめっこをしていた。
背負っている番号は12。
中学生の頃と変わらない数字である。
赤「どうかしたかい?」
貴「んー…これ、俺が着ちゃっていいのかなって」
そう言いながら変わらずユニフォームを見つめる顔は、どこか暗かった。
貴「俺は試合に出ないわけだし、3年生の先輩たちに譲った方がよかったんじゃないかと思って」
赤「………僕も出るつもりはないよ。だからそれは僕にも言えることだ」
結果のわかってしまう試合には興味がない。
貴「征ちゃんはダメ!キャプテンだし!試合に出なくてもみんなを引っ張らなきゃいけないし!」
ぐわっと勢いよくそう言ったと思ったら、また顔に影を落とす。
ゆらゆらと揺れる瞳は、微かに潤んでいるように見えた。
貴「____俺は、いてもいなくても変わらないから」
____【
貴「俺は、みんなと違うから」
完璧なわけではないが、Aは見たものをほぼ全て記憶することができる。
それは記憶を思い出そうとするたびに、過去に経験した感情までもを強く呼び起こしてしまう。
感情の昂った記憶ほど鮮明に覚えているようだ。
貴「俺は、いらない子だから」
ごく稀に、それがフラッシュバックするらしい。
まるで走馬灯のように、頭の中でそれだけが永遠とぐるぐる回っているそうだ。
だからだろう、Aはたまに酷く不安定になる。
貴「…っ、俺は、普通じゃ、ないから…!」
僕ができることは、なにもない。
どんな言葉を投げかけても所詮はその場しのぎなのだと、これまでの経験からわかっている。
ただ、落ち着くまで隣にいることしかできない。
____Aが、救われることはない。
赤「お前はおかしくなんかないよ。例え、誰がなんと言おうとも」
いつか救われる日がくればいいと願うことしか、僕にはできないのだ。
救われないAに、手を伸ばすことしかできず。
ずるずると同じことを繰り返す。
赤「僕が傍にいる。だから、Aも僕の傍にいてくれ」
なんて、歪んだ関係なのだろう。
赤「____お前は、僕の【
この言葉は、まるで呪いのように。
僕とAを繋ぐ、鎖のように。
またひとつ、重くなってゆく。
【赤司side end】
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あやの(プロフ) - RiRさん» わああ!更新再開して初めてのコメントいただけてとても嬉しいです(;_;)ありがとうございます!のんびり更新で申し訳ないですが、楽しんでいただけるように頑張ります(^O^) (2019年10月4日 13時) (レス) id: 194bfbd275 (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とても面白いお話をありがとうございますm(_ _)m続きがとても気になりますのでぜひ私に続きをお恵みください!更新をお待ちしております (2019年10月1日 18時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
あやの(プロフ) - 刹那さん» ありがとうございます!2年越しにはなりましたが、のんびりと更新再開していきます(^O^) (2019年6月5日 18時) (レス) id: 194bfbd275 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - とっても面白いです!更新待ってます! (2017年3月19日 2時) (レス) id: 7c1d45a73f (このIDを非表示/違反報告)
あやの(プロフ) - 誄さん» わああっ そう言ってもらえると本当に嬉しいです(;_;)ノロノロ更新ですが続けさせてもらいます!ありがとうございます! (2016年12月19日 11時) (レス) id: 2ac38d71af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやの | 作成日時:2016年5月12日 21時