33 ボマーボーイ ページ34
爆豪くんが思っている個性は私の嘘だ、そして私は学校側にも嘘をついている。
私は私の異能力を『風化』と言った。けれど厳密には『過去』と『未来』に見たものを変化させる。時間操作、というのが表現には近い。
もしそれを正直に言っていたなら、爆豪くんを納得させれなかっただろう。
この自意識過剰自尊心高めの面倒な餓鬼を黙らせるには騙すのが一番だ。
「うーん、でも爆豪くんには悪いけど風化させるものがないから使いようがないし・・・」
「あ？地面でも壊しゃいいだろーが。」
「いや、セメントだよ？無理なものは無理だし。個性使いようがないから諦めてよ。」
「じゃあ辞退しろ。」
「はい？」
私がなるべく笑顔で、優しく言ってあげているのに爆豪くんは吐き捨てるように言って私を挑発する。
「丸顔みたいに一発逆転もできねえ、他の奴らみたいに個性も使えねえ。勝てるわけないだろうが。」
おっとこれは彼なりの心配かなァ？と内心馬鹿にしてみる。
ただちょっぴり、ちょっぴりだけ
「アハハッ、ちょっと苛つくわァ。」
香山さんにニコリと微笑むと引き攣った笑みを返された。まァ香山さんのことだし笑顔の意味も良くわかってるだろう。
「ねェ、爆豪くん。爆豪くんってどこかの無個性に戦闘訓練で負けてなかったっけ？」
「あ？」
「じゃァ今回は個性無使用に負けるかもねェ。」
一番大嫌いな緑谷を出汁にした挑発に爆豪くんの苛立ちはストレスゲージをオーバーしたらしく、悪人面がとてつもない事になっていた。
いやこれはもうヒーローとかできないよ。
「上等だぶっ飛ばしてやる。」
その言葉で挑発合戦は終了。そろそろ試合も始まる。
お腹を蹴り飛ばしてしまった常闇くんは幸いにも骨までは折れてなかった(一部にヒビ)し、多少本気でやっても問題ないはず。
(さて、此処で勝たなきゃ目立てないし。)
此処までぐいぐい上ってきた爆豪くんを個性なしが倒す、そこをまずは目標にしよう。
手首をぶらぶらしてスタートの合図を待つ。あゝ、この瞬間が。この待っているドキドキが。
早く倒したい早く殺したい早く蹂躙したい貶めたい馬鹿にしたい貶したい屈辱的だと思わせたい。
でも駄目だ、遊んじゃ駄目だ。
仕事みたいに切り替えよう、私情を交えずに殺ろう。
「それじゃあ・・・始め！」
開始直後、と言うか一瞬で
「ふっ飛べ！」
眼前を炎と爆風が覆いつくした。
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