小児科医の日課〜研修医、平野紫耀の経験記録〜【伍】 (ページ35)

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響『答えて。何時に着いた？』

さっきから何なの？知って意味のある事？

でも、どこか真剣で…怖い。

『8時26分、、です』

響『学校に着いて一番最初に話したのは？』

『勇人！友達の』

響『今日のお昼は何食べた？』

響『5限目の授業は？』

響『放課後話したのは？』

『あなたですよ？』

段々と話題が放課後へと移っていく。

響『ここからはYESかＮＯで答えてね。
今日、電車乗った？』

『YES』

なんか水平思考ゲームみたい。

響『それはいつもと違う電車？』

『…YES』

こいつ、もしかして気づいてる？

響『いつもと違う電車に乗ったのはなんで？』

『用が、あって』

響『実はここから先、俺に質問されたくないだろ？』

『…うん』

響『それは、思い出したくないから。一刻も早く忘れたい。そうだろ？』

響煌は分かってるんだ。なんで俺が電話をしたのか。何を言いたかったのか、何を聞いて欲しかったのか。

でも、言ってしまったら、現実と向き合うことになる。

また嫌なことに立ち向かわなきゃいけなくなる。

人の苦しんでる姿を想像しなきゃいけない。

本当は何があったのか聞いて欲しい。だけど、言いたくない。

響『大体何があったのかは分かってる。
だけど、言うか言わないか、決めるのは紫耀だ。

紫耀は気まぐれさんだからな』

響煌は小さく息を吐くと、車止めの石に座った。

気まぐれさん、か。

『親のこと、なんだけどね…』

響『うん』

突然の切り出しに響煌は少し驚きつつも、頷いた。

『なんか、響煌と出会いたての頃からまぁまぁ大きな病気持ってたんだけど、それが、最近は治療もしてて段々良くなってはきてたみたいで』

響『うん…？』

『最初のほうは俺、病院好きじゃないし、行くのためらってたけど最近は慣れてきてちゃんと行けるときにはお見舞い行くようにしてたの』

響『だからここ数か月は部活休んでたんだ』

『うん、病気が分かったときは手術とか言われてたけど、もしかしたら病気も良くなってきてこのまま何もなく退院できるのかなー、って思ってた』

響『なら、よかったじゃん』

『なんだけどねっ……』

響『うん』

順調に話を進めていたはずが、目がぶわっと熱くなって何も話せなくなった。

『今日、ｸﾞｽｯ…先生に、、言われて…

病気が再発したって言われて、ｸﾞｽｯ…』

『俺、もうどうしたらいいかわかんないっ……』