小児科医の日課〜研修医、平野紫耀の経験記録〜【伍】 (ページ33)

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気が付いたら、響煌に電話してた。

1回、２回とコール音が鳴り響く。

響『もしもーし、紫耀？』

『あ、響煌』

響『うん、どしたの？…わぁぁ！ポムちゃん！ポーム！スマホにアタックしないの！』

電話の向こうからポム姫さんであろうワンちゃんの鳴き声が聞こえてくる。

響煌ポム姫さんのこと愛しすぎでしょ(笑)

響『ごめんごめん、ポムちゃん今深夜テンションでおかしくなってる(笑)
どうした？』

『いや、なんか、その…』

響『え？もしかして要件忘れた？』

『…たぶん？』

響『もうー、またー？(笑)』

響『よし…どう？ポムさん見える？』

『おー！見える見える！かわいい！(笑)』

響煌が音声通話からビデオ通話に切り替えて、画面にドアップのポム姫さんが見える。

ブンブンしっぽ振ってカメラに鼻近づけててかわいい(笑)

響『よかったね〜、ポム。紫耀がかわいいって言ってくれてるよ〜』

『マジでかわいいね』

響煌が部屋の奥の方へボールを投げるとポム姫さんは一目散に追いかけてフェードアウトしてった。

響『どう？少しは癒された？』

『うん、めっちゃかわいかった。ありがとう』

響『で、紫耀さんは何悩んでんの？』

『え…？』

平常を保っていたはずの心臓がどくどく音を立て始めて、一気に焦ってくる。

響『隠さなくても分かるよ、何か言いたい事があんだろ？』

何で…バレてんの…。

響『好きな子ができたとかそういうんじゃないよな？

もっと大きいこと。家族のこととか？』

何で、誰にもバレないようにと思ってたのに、響煌には分かんの。

響『…言わないんだったら切るよ。じゃ、』

『たすけて』

言った瞬間に、抱えていた全てが堪えきれなくなった。

ずっと我慢しようとしていたものが頬を伝って制服にシミを作った。

響『何があった？』

『響煌、俺、…ｸﾞｽｯ…』

話そうとしても、ただ声を押し殺して泣くことしか出来ない。

響『俺ん家来る？』

『むりだよ…』

響『いつものコンビニ、今から来れるか？』

『行く』

響『分かった。電柱にぶつからないようにちゃんと歩けよ』

『うん』

響『あと…何着てるか知らんけど、さすがにTシャツ1枚とかはやめろよ。なんか上に着て、カーディガン？でも羽織っとけ。分かった？』

『わかった…ｸﾞｽｯ』

もう顔が涙と鼻水といろんなものでぐっちゃぐちゃ。

響『待ってるからな、俺は』