小児科医の日課〜研修医、平野紫耀の経験記録〜【伍】 (ページ22)

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紫耀Side

ふと目を覚ますと、いつの間にか隣にジンがいた。

声を出そうとしても、何も出ず、その代わりに違和感に気づく。

…ここは家じゃない、病院だ、と。

長い長い夢を見ていたような気がする。

確か、ジンと岸先生と俺で何かを楽しく話していたときのやつで。

主治医の方と話してから、一体どのくらい時間が経ったんだろう。

カーテンが閉め切られているせいか、時間がわからない。こんなんじゃ体内時計狂っちゃうよー。

元気だったときっていうのも変だけど、少なくとも一ヶ月前よりかは確実に体が悪い。

一方でこっちが起きたことには全く知らず、隣で黙々と何かを書いて読んで…って繰り返しているジン。

あのねぇ…もう医学部卒業したんだよ？

国家資格受かったときの賞状貰ったの、忘れたの？

なんてことを言ってやりたい。

バイタルとか記録するんだったら紙じゃなくてパソコンに入れるはずだから、一体何してんだろ。

コンタクトつけてないせいで本っぽい参考書っぽい何かには、よく分からない知らない言葉が並んでるっていうのはわかった。

英語でも、韓国語でもなく、謎の言語。

また何か新しいものをやってる(笑)

ほんっと律儀？真面目？だねぇ、神宮寺さんは。

自分のためじゃなく、誰かさんのためだったら身を粉にして＿＿みたいなのには尊敬しますけど…少しは自分を気遣ってほしいってのもある。

昨日からずっと考えて続けてる。

そろそろ入院してから一ヶ月くらい経つってことだから当然、仕事をしてない状態になってからも一ヶ月ぐらい経つことになる。

溜まってた有給の分で今はどうにかなってるけど、休職扱いになるのも時間の問題。

ただでさえずっと毎日体調悪いのに仕事のことまで考えないといけないとか、また熱出そう。

次まともに歩いて仕事できるのはいつになるんだろう。

嫌だなー、俺だけ研修医のまま置いてかれちゃったら。

大学には休学とか留年とかのシステムがあるけど、社会人になっちゃうとそういうの完全に自分の責任だからさ。

デスク作業の仕事だったら、ベッドの上でもどうにかなるかもだけど、医者はベッドの上で完結はしないし。

発作が起きたら大変だからって言われてまぁまぁ強力な薬を入れられたけど、そのせいで一日の大半寝て過ごしてるようなもんだから。

薬のせいか、はたまた疲れからか、また夢の世界へと意識が遠のいていった。