小児科医の日課〜研修医、平野紫耀の経験記録〜【伍】 (ページ21)

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玉森Side

玉「カーテン開けますね」

カーテンを開けると、白い無機質な空間に日光が入り込んで、室内を明るく染め上げる。

少しでも、気分が良くなってくれたらいいんだけど。

朝、ナースステーションで一通り話を終えてきた後に真っ先に向かったのは、

玉「おはようございます、平野さん」

平野さんのいるICU。

昨日、容態が急変して心停止。

一度は状態が良くなったかと思ったけど、呼吸困難に陥ってしまって最終的に呼吸停止に陥ってしまった。

あの後、挿管をして偉い救命科の先生にヘルプに入ってもらったおかげで何とか命は繋いだ。

かなり致命的と言ってもいいかも。

平野さんが呼吸停止を起こして数十秒も経たずにモニターのアラームが鳴り響いて、血圧やら酸素濃度やらの数値がどんどん下がっていく光景はなかなかに怖かった。

机に残されている付箋には…朝早くに日森が様子を見に来てくれたのかな？

血圧であろう数字が書かれていた。

玉「血圧少し低いですね…、体調はどうでしょう、朝と変わりないですか？｣

うん、と頷いた平野さん。

まだ少し眠いかな？

眠そうに瞼を開いたり閉じたり。

やっと見なくて済むであっただろう光景がまた広がってしまっている。

ジン曰く、平野さんは気管挿管をするのも自身がされるのも苦手を越えて嫌いらしいから、今日からの数日間はそれなりのストレスになるだろうな。

前に“挿管してると話せなくなるからめちゃくちゃめんどい”って言ってたし。

ベッドのリクライニングを上げてみたけど、少し呼吸がしにくそうな…、後でやるか。

腕に駆血帯を巻いて…、針を持って平野さんの顔をチラッと見るとぎゅっと目を固く閉じていた。

ちょっと面白いから少し焦らしたいけど、、早めに終わらせてあげよう。

玉「平野さん、もう終わってます。目開けても大丈夫です(笑)」

そう言うとおそるおそるといった感じで二重瞼の大きな瞳を覗かせた。

次は、俺が今日平野さんに伝えたかった最大のこと。

玉「昨日、採血した時の血液検査の結果が届きました」

昨日、発熱していて、かなり体が熱かった時に採血したから、もしかしたら覚えてないかもなんだけど。

俺がじっくり説明するよりも、きっと直接平野さん自信が見る方がきっと早いから、

そう思って本人に検査結果が載った紙を渡した。