可能性の話 ページ1
一同がAの眠るベッドの周りを囲むように立って数分後。
ふるりと長い睫毛が震え,Aの瞼がゆっくりと持ち上がった。
「!Aさん!聞こえますか……!?」
カナエの問いに状況を確認するように何度か瞬きをした後,口角を上げてAは頷いた。
その姿に一同は安堵の息を漏らす。
『……はい,聞こえております。此処は,保健室でしょうか?』
「そうです。Aさんが手洗い場で倒れたのが美術室から見えたんで,運びました」
天元が答えると,Aは申し訳なさそうに眉を下げる。
『すみません,お手数をおかけしてしまいました……』
「いや,気にしないで下さい。意識が戻って何よりです」
「____いきなりで申し訳ないのですが,倒れてしまった事に心当たりはありますか?」
Aの脈を測り,体温計を差し出しながらカナエが問う。
Aは体温計を受け取り微笑むと,唇を開いた。
『____私は,固形物を食べると噎せてしまうんです。最悪の場合は胃液まで吐き出してしまいます。今回,倒れたのも元々体調が優れない時に固形物を口にしたからだと思います』
「…!ッということは……固形物が食べられないという事ですか…!?」
小芭内が色違いの目を見開く。
他の者達も。
『過去にも,何度かこういうことはありました。今回はかなり軽い方です』
「受診はされたんですか?」
『はい。ファーストオピニオンは,軽度の嚥下性失神ではないかとのことです』
“嚥下性失神”。それは,飲食をしている途中で失神することを指す。飲み物でも発症するが,固形物の方が可能性は高い。
症例が少なく,過去のケースはAの比ではない。心肺停止にまで陥り,機器を身体に埋め込む手術を行った例もあるという。
『病院の先生は嚥下性失神の可能性があると仰っていましたが,あくまで可能性です。本当に嚥下性失神なら,ここまで軽度では済まないと思います』
皆,絶句した。
そんな中,涙を流す行冥が尋ねる。
「…このような症状が現れたのは……何時からでしょうか…」
『中学1年生の夏からです』
「……では,その時から食物を殆ど口にしていないと……」
Aは静かに頷く。
「今まで殆ど食べていないのなら,どうやって栄養を補っていたんですか!!」
先刻まで固まっていた杏寿郎が大声で問う。
『病院で処方された栄養ドリンク剤を飲んでいます。それでも駄目な時は点滴も投与して頂いていました』
其処まで言うと,丁度体温計が鳴った。
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M,B(プロフ) - ☆Erika☆さん» 返信が遅くなってしまいすみませんっ!お優しい言葉を有難うございますー!よそ見しながらの亀更新ですが,頑張りたいと思います! (2020年6月21日 8時) (レス) id: fbbdbd04d4 (このIDを非表示/違反報告)
あいひ - 凄く面白いです!続きがとっても楽しみです!!!更新、頑張って下さい!! (2020年6月21日 1時) (レス) id: 1f3cc1e722 (このIDを非表示/違反報告)
☆Erika☆(プロフ) - 凄く続きが楽しみです!また、気が向いたら更新してください!待ってます! (2020年6月9日 22時) (レス) id: f0480ad40d (このIDを非表示/違反報告)
M,B(プロフ) - サクラさん» 有難うございます〜!嬉しいです!頑張ります! (2020年4月21日 21時) (レス) id: fbbdbd04d4 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - この後の展開が気になります。更新頑張ってください (2020年4月21日 21時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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